ヴェーナー 「職業としての政治」

職業としての政治 (岩波文庫)

職業としての政治 (岩波文庫)


ひさしぶりに読み返してみて、あらためてとても面白かった。

指導者としての資質や意識や責任を欠いた、官僚による無責任な政治、「官僚政治」の問題を、アイロニーとペーソスをこめてヴェーバーが述べている箇所や、

本当は社会構造の問題であり、勝敗と倫理は別のはずなのに、戦争責任のことをあげつらうことをシニカルに批判している箇所、

資産家でもない限り、政治のために純粋に生きることは難しく、政治によって生きることが余儀なくされ、金権政治にもなりやすいと指摘している箇所など、

なんだかヴェーバーの時代のドイツだけでなく、今に至る戦後の日本のことを述べているようなリアルさをあらためて感じた。

また、「マシーンを伴った指導者民主制」しか、もはや近代の議会制民主主義には十分な活路はなく、無責任な官僚政治よりはその方がまだしも良いことへの指摘は、今の日本の現状にあてはめてもとても考えさせられる指摘と思う。

神義論への痛切な認識も、あらためて瞠目させられた。

あまりにも有名な、政治指導者に必要な資質としての「情熱・責任感・判断力」の三つについて述べられている箇所や、心情倫理と責任倫理の話も、あらためてじっくり読むととても考えさせられ、面白かった。

問題・現実に即して考えること、
問題・現実への情熱的献身。

精神を集中して冷静に、現実をあるがままに受けいれる能力。

予見しうる結果の責任を負うという責任感。

生の現実を直視する目を養う訓練。

こうした資質こそ、今の日本の政治家および国民に、大なり小なりそれぞれ可能な形で、できるだけより多く持つことが求められている資質なのかもしれない。

「にもかかわらず!」この現実に立ち向かい、少しでもマシな世の中を目指す精神こそ、今の日本や世界にも最も大事な精神なのかもしれない。

今あらためて読まれるべき名著中の名著だと思う。