- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 2009/06/26
- メディア: 単行本
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マルクスは文体が難渋で、正直かなり私はニガテ。
かの石川三四郎も、マルクスの文章の難しさとつまらなさに匙を投げたらしい。
しかし、池上さんの解説だと信じられないぐらいわかりやすく面白い。
資本論の第一巻の解説なのだけれど、とっても面白かった。
冷戦崩壊とネオリベのあとに、再び剥き出しの資本主義に直面している現代人にとっては、やはりもう一度マルクスを批判するにしろ評価するにしろ再読する必要があり、その時にこの本は入門書としては最適かもしれない。
特に、なるほどな〜っと思ったのは、以下のマルクスの言葉。
「洪水は我れ亡きあとに来たれ!
これがあらゆる資本家と資本家国家の合言葉である。
だからこそ資本は社会によって強制されない限り、労働者の健康と寿命に配慮することはない。」
「洪水は我れ亡きあとに来たれ!」というのは、「後は野となれ山となれ」という意味で、要するに資本主義のもとでは企業は目の前の利益や経営のことしか考えることができず、非情な資本の論理に突き動かされるために、社会や政府からの法律による規制や強制がない限り、労働者の健康や安全に配慮することはできない、ということだろう。
資本家個人はそれぞれに良い人もいるかもしれないが、非情な資本の論理に突き動かされざるを得ないというマルクスの分析や指摘もとても面白かった。
ソビエトや東欧や中国みたいな社会主義国家は、もちろん御免蒙るとしか、その歴史を見た人は誰でも思わないと思うが、かといって、剥き出しの資本主義というものの弊害も、心ある人ならば誰でも直視せざるを得まい。
特に、小泉改革以後、非情な資本の論理や自己運動を目の当たりにしている我々日本人としては、資本主義を適切に修正するためにも、マルクスの分析や指摘は、よくよく再読吟味すべきなのかもしれない。
さらっとすぐに読めるので、多くの人にオススメしたい一冊である。