- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 2009/07/29
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本当にすごい作品だった。
満州国の炭鉱での中国人労働者たちの現実。
日本の軍隊の現実。
ソビエトの現実。
戦争や、国家が崩壊した中での、人間の姿。
本当にすごい迫力で、考えさせられる。
結局、国家というものは虚構であり、最終的に人間を決めるのは自分自身の体力と精神力なのかもしれない。
主人公の梶が、過酷過ぎる現実を生きながら、最後まで人間らしくあることができたのは、妻への愛情があったからなのだろうと、最後のシーンでは本当に深く考えさせられた。
人間が人間であることは時に非常に難しく、人間性を失わせるような過酷な現実があの時代にはあったということと、にもかかわらず、本当に大切な人間の条件は、やはり妻や家族への愛なのだと思った。
「人間の隣には必ず人間がいるものだ」
というこの作品の中に出てくるセリフのとおり、梶は困難な状況で格闘しながらも、いつも孤立することなく、誰かと連帯できていたと思う。
『神聖喜劇』の東堂太郎と、『人間の条件』の梶は、同じく知識人が軍隊に入った場合の悲劇と、不条理との格闘という点で同じだけれど、『神聖喜劇』よりも『人間の条件』の方が主人公が置かれている状況がはるかに過酷だと思う。
実際の戦場に出たかどうか、満州か国内か、ということの違いが大きいのだと思うが、ただ、それと同時に、梶に対して若干酷な評価かもしれないが、東堂の方が圧倒的な知識を駆使した知的な戦いにおいてすぐれており、しかも終始冷静で、梶のように実際に暴力を行使することがなかった点で東堂の方がより智慧があったような気がする。
もっとも、置かれている状況が梶の方がはるかに過酷なので、やむをえないとも言えるが。
いろんなことを考えさせられる、本当に名作と思う。