- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/01/22
- メディア: 新書
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オバマ政権が誕生する前の、ブッシュの時代に書かれたものだけれど、とても考えさせられる。
民営化してはならないものがあること。
市場化の結果としての、危機管理も医療も教育も、悲惨な状態のアメリカの現実。
日本はこうなってはならないと思うけれど、この方向に行ってしまってるかもしれないと読んでいて思った。
著者は、「経済重視型の民主主義」と「いのちをものさしにした民主主義」の二つの違いと対立を指摘している。
つまり、新自由主義の市場主義と、民営化してはならない領域については人権を重視する姿勢の二つである。
おそらく、日本は、この二つがいませめぎ合っている状態なのだと思う。
いまSEALDsがやっているのは、後者の立場からの前者へのプロテストなのかもしれない。
この本には、経済的な苦境のために軍隊に志願せざるを得ない人々の様子が詳細に描かれていた。
安倍政権が労働環境の改悪と安全保障関連法案を同時に進めるのは、単に偶然ではないのかもしれない。
アメリカ式のそうしたシステム、苦境に陥った人々が結果として軍隊を志願せざるを得ないシステム、つまり「経済的徴兵制」の導入のためと考えると、わりとすんなりとこの二つがセットである理由がわかる気はしてくる。
うがち過ぎた見方だろうか。
しかし、この本を通じてアメリカの現実を見ていると、どうにもそんな近未来が心配されてくる。
この本の中に紹介されている、子どもの医療費のために借金を抱えたトラック運転手が、その返済のためにイラクで輸送の仕事をし、兵隊にはペットボトルが渡されるが運送業者は現地の水を飲まされ、劣化ウラン弾に汚染された水で白血病にかかったという事例は、悲惨過ぎて言葉を失う。
日本も安倍政権のもと、雇用環境の劣化と軍事行動の範囲拡大が進めば、自衛隊の行動にあわせて、アメリカのようにトラック運転手等が民間会社によって戦地に送りこまれ、悲惨な死や病気に陥る、ということも近い将来にありえるのかもしれない。
杞憂に終わればいいのだけれど。
日本の将来について考えさせられる、2000年代のアメリカの現実についての本だった。
多くの人に、あらためて一読をおすすめしたいと読んでて思った。