- 作者: 副島隆彦,佐藤優
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2010/06/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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正直、つまらない本だった。
去年の六月に出た本だということもあるが、ことごとく近未来の予想がはずれており、2010年の末にはオバマがやせ細って退陣などという予測も大きく外れている。
何より、具体的な政策論が何もない。
やたらと善玉と悪玉とが固定した形で人名を羅列されているが、基本的にはそれだけ。
「ゴルゴ13」のような漫画であればともかくとして、この本はどうなのだろう。
この本によれば、メディアと官僚がアメリカの手先となって、「国民主権」を目指す小沢・鳩山両氏を攻撃し、それに対し小沢・鳩山両氏らが果敢な闘いをしているとのことである。
そうした観点から徹底してマスコミや官僚を批判しているのだけれど、こうした小沢派の人々が、同様にマスコミの集中砲火を受け、官僚・東電と孤立無援の戦いをしている菅総理に対しては、全くのダブルスタンダードで、罵倒や悪罵ばかり繰り返し、そうしたマスコミや官僚たちと共同戦線を張って菅総理を追いつめていることに、彼らは矛盾を感じないのだろうか。
彼らの図式が仮に正しいものだとすれば、敵は菅総理ではなく、マスコミや官僚勢力となるはずだが、どうもそうではなく、小沢派は自分たちへのマスコミの報道は全く信用しないのに、菅総理に対してのマスコミの悪罵は全面的に信用してその片棒を担ぎ提灯持ちとなっている。
不思議なものである。
具体的な政策への理解や議論が欠如した中で、人間を固定的に善玉と悪玉とに分ける思考パターンが、そのような結果を生じるのだろうか。
とはいえ、小沢派のひとつの思考パターンを知るサンプルとしては、この本は役に立つのかもしれない。
にしても、どうもこの本の著者の副島さんと佐藤さんは、「ネオ・コーポラティズム」(統制経済)を一番心配しているようである。
一方の、植草さんらの小沢派は、「新自由主義」を口を極めて罵倒し、小泉元首相も菅総理も「新自由主義」として批判されているようだ。
ネオ・コーポラティズムと新自由主義は明らかに相容れない概念だが、小沢派の人々の間にはその矛盾はないのだろうか。
それとも、何かを悪玉として設定して、叩きのめすことができるならば、なんであろうとどうでもいいのだろうか。
ただ、まあ、上記のことを割引いて、2009年の政権交代に大きな意義があり、日本の民主主義にとって大きな意味があったと力説していることそのものは、同感であり、大事な視点だと思う。
その理念や成果を大事に育むことが大事という主張も、共感させられる。
ただ、問題なのは、小沢派があまりにも固定した善悪二元論によって菅総理を過剰に悪玉視して妥協なき打倒に走ることによって、自分たちこそがその政権交代を早期に葬り去ろうとしていることなのだけど。
あと、鳩山さんに対して、どう考えても過大評価が目立つ気がする。
小沢さんについては、確かにこのような面もあるかとは思う。