先日、西日本新聞の夕刊にとても良い記事が載っていた。
本当にそのとおりと思った。
多くの人に読んでもらいたい。
西日本新聞は本当に良い記事やコラムを載せると思う。
四月ころには、柳田邦男さんの原発事故調査委員会の設立を求める記事が載り、その後本当に原発事故調査委員会が、柳田さんもそのメンバーの一人として発足した。
今や誤報とデマばかり流す四大紙より、よほど地方紙の方が良心的でクオリティも高いことがしばしばあるのではないか。
矢作俊彦「それでも、鼻をつまんで菅を支持する 本当の意味での新世紀にシフトするなら」
(西日本新聞夕刊 7月6日(水曜日)付)
十日ほど前、『菅を支持する』と発言したら、結構な騒ぎになってしまった。
なぜ、菅直人をよってたかって首相の座から引きずり降ろそうとするのか。
それが分からない。
首相の器ではない、嘘つきだ、性格が悪い、など、理由は百も聞くのだが、どれも一国の総理に辞任を迫るほどの大義があるとは思えない。
私たちはこの数年、もっと器が小さく、嘘つきで性格の悪い総理大臣を見てきたではないか。
それを今、なぜそんなことで二カ月近く、国会審議を止めるのか。
そこにキナ臭いものを感じる。
だから、つい言わざるを得なくなったのだ。
『私は鼻をつまんで菅首相続投を支持する』と。
※※※
菅首相とその反対者の復興政策に大した違いはない。
ただ一点、違うのは、原発に対するスタンスである。
菅だけが再生可能エネルギーへの転換と原発の(段階的)廃止を主張している。
その彼が発送電分離を言い出し、浜岡原発の停止要請を発した直後だ。
経済団体の首魁が声高に非難し、それを狼煙(のろし)に、永田町の誰も彼もが、一斉に菅降ろしを始めたのは。
すべてのメディアが、この因果関係に目をつぶっている。
何故かは分からない。
しかし、電力企業が多くのメディアにとって大変大口のスポンサーだというのは事実だ。
そして、多くの国会議員にとっても同じく。
名のある政治家で、電力企業から献金を受けていないのは菅直人と小泉純一郎だけだと聞く。
その菅と小泉元首相、それに河野太郎をのぞけば、発送電分離と脱原発に関して誰もまともな意見を述べていない。
もちろん、電力企業のスポークスマンをもって任じている者は別だ。
むしろ、そっちの方が多数だ。
その多数が今、一丸となって菅を首相の座から引きずり降ろそうとしている。
※※※
『菅は品性下劣、自己の栄達しか考えていない。そんな者に与(くみ)するのか』と、お叱りを多くいただいた。
― いかにも、そのとおり。
しかし、彼が自民党や、小沢被告一派が言う通り、延命のためならなんでもする人物なら、それでいい。
数十日の延命のために、原発をひとつ止められたのである。
あと半年も延命できるなら、エネルギー政策を脱原発へ本格的にシフトするかもしれない。
そして今、首相が替われば、電源権益擁護に引き返す可能性の方が大きい。
菅は二十年以上昔から脱原発を唱えてきた。
しかし政権についたとたん、口を閉ざし、電力企業、原発権益と休戦した。
それを今になって、ふいに持ちだす。
当然、延命のためなのだろう。
それでも、脱原発を公然と口にした最初の宰相であることに何ら変わりはない。
自家発電だけで原発六十基分ある。
発送電を分離すれば、これだけで原発など不要、当然、節電の必要もなくなるはずだ。
それに頬被(ほおかむ)りして、節電をあおり、原発の必要性を私たちに押し付けるような企業は、すでに反国民的と言える。
脱原発、発送電分離は、また新たなビジネスチャンスでもある。
新しい社会、産業、生活モデルへの転換点でもある。
ここで乗り遅れたら、この国は没落するだろう。
すでに世界は本当の意味での新世紀へシフトしはじめている。
だから、仕方ない、私は鼻をつまんで菅を支持する。
どうやら他に手立てがない様子だから。
(以上)