サキャ・パンディタ、クンガー・ニンポ (文殊菩薩) 「四つの捕われから離れる秘訣」

『サパンが著した「四つの捕われから離れる秘訣」』



聖なる師の御足に礼拝致します。


世間的には有暇具足の身体を得た。宝なる仏陀の教えに出会い、作意ではない心を起こし、今、錯誤のない修行をしなければならない。それにおいては、「四つの捕われ」から離れるための実践をすべきである。


それが何であるかと言えば、


「第一に」今生に捕われないこと。
「第二は」三界の輪廻に捕われないこと。
「第三に」自身の利益に捕われないこと。
「第四に」事物や相(現象、あるいは状況)に捕われないこと。


これらについて述べるなら、


今生は水の泡のようなもの
いつ死が訪れないとも限らず
永続するものと捉えてはならない


この三界の輪廻は
毒をもつ果実のようなもの
一時的には美味であるが
将来的には害をもたらす
それに捕われる誰もが誤りを犯す


自身の利益に捕われるのは
敵対者の息子を育てるようなもの
一時的には歓びであっても
究極(将来)的に自身に害をもたらすことが決定している


それゆえ、自身の利益に対して捕われたとしても
一時的に幸せでも、究極(将来)的には三悪趣に墜ちる


事物と相(現象、あるいは状況)に捕われるのは
蜃気楼の水(逃げ水)に捕われたようなもの
それゆえ、一時的には出現するが
口にすることはできない


誤った意識に、この輪廻が現われても
智慧によって分析すれば
実体は一つとしてない


それゆえ、過去には心がなく、未来にも心はない
現在においても、心はないというように理解し
一切法(すべての存在)に対しては分別から離れることを知るべきである


そのようにすれば、今生に対して捕われることがなく
三悪趣に生まれることがない
三界の輪廻に捕われることがなく
輪廻に生まれることがない


自身の利益に捕われることがなく
声聞や縁覚に生まれることがない
事物や相(現象、あるいは状況)に捕われることがなく
素早く確実に正等覚(覚り)を得る




(ゲシュー・ソナム・ギャルツェン・ゴンタ『チベット仏教 文殊菩薩の秘訣』(法蔵館)より)


この文章は、サキャ・パンディタがクンガー・ニンポの教えを基に書いたそうである。
クンガー・ニンポは、文殊菩薩に直接出会い、この教えを授かったそうである。


すごい智慧のことばだ。