日独友好決議で棄権続出「歴史認識を誤認」
http://news24.jp/articles/2011/04/22/04181484.html
この決議文のいったい何がそんなに問題なのだろう?
決議文を読んでも、よくわからない。
「侵略」などの文言は一切この決議文にはない。
『日独交流百五十周年に当たり日独友好関係の増進に関する決議』
(第一七七回、決議第五号)
今から百五十年前の一八六一年、我が国は日・プロイセン修好通商条約に調印し、日本とドイツの前身であるプロイセンとの間に公式な関係が樹立された。
一八七一年にプロイセンを中心に統一を達成したドイツは、我が国が近代化に当たり模範とした国の一つであり、日独両国はお互いに影響を及ぼし合いながら、友好関係を築いてきた。
両国は、第一次世界大戦で敵対したものの、先の大戦においては、一九四〇年に日独伊三国同盟を結び、同盟国となった。その後、各国と戦争状態に入り、多大な迷惑をかけるに至り、両国も多くの犠牲を払った。
しかし、両国は奇跡の経済復興を遂げ、同時に戦争への反省に立ち、今日、自由、民主主義、人権の尊重という基本的な価値観を分かち合いつつ、世界の平和と繁栄のために緊密に協力している。さらに、両国の国民は、相互の文化と価値観に対する尊敬の念を基礎に、広範多岐にわたる交流を着実に進めている。
本院は、日独交流百五十周年に当たるこの機会に、今後とも我が国は、信頼関係に基づくパートナーであるドイツと共に、国際平和の実現に向けて最大限の努力を継続する所存であることを、ここに銘記する。
右決議する。
(以上)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/topics/ketugi110422(3)-1.html?OpenDocument
しいて問題にするとしたら、そしておそらく自民党の議員が問題にした部分と思われる箇所は、
「多大な迷惑をかけるに至り」
という一文だろう。
・誰が誰に対してかけた「迷惑」なのか
この決議文からは不明である。
また、ナチス・ドイツと日本の違いについてもこの決議文は不明である。
その点が、問題にしようと思えば、問題と言えるかもしれない。
とはいえ、逆に言えば、「迷惑」の中身は決議文からは不明なわけだし、ナチス・ドイツと日本が同じだと言っているわけではない。
だいたい、迷惑とは、ある行為がもとで、他人が不利益を受けたり不快を感じることである。
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/216933/m0u/%E8%BF%B7%E6%83%91/
戦争が起これば、相互に「迷惑」がかかるのは当たり前のことだ。
日独が周辺国に迷惑をかけたことも、米英が日独に迷惑をかけたことも、どちらも当然のことである。
もっと言えば、日独と同盟や連携関係にあった多くの国々や人々、フランスや東欧のいくつかの国々の人々や、アジアで日本と連携した人々は、敗戦後多く処刑されたり刑罰を蒙ったのだから、日独の敗戦により多大な「迷惑」を蒙ったと当然言えるだろう。
そう考えれば、歴史の誤認など全くないと言える。
この程度の決議文にいちいち目くじらをたて、騒ぎ立てる人々は、いったいどのような決議文であれば良いというのだろうか。
あるいは、それらの人々はドイツと密接な関係を築くこと自体に反対なのだろうか。
ある種の対米従属派は、アメリカの意向をおもんぱかるあまりに、日本がアメリカ以外の国と多角的で密接な関係を築くこと自体に及び腰なのかもしれない。
そういう人々こそ、その意気地のなさと対米隷属根性を「反日」「売国」と呼ばれてしかるべきではないか。
イラク戦争において、ドイツとフランスは提携しつつ、アメリカの不義の戦について断固として唯々諾々とは従わなかった。
一方、日本はあのような不義の戦争に、唯々諾々と左袒した。
日本が、単なる対米従属から脱却するには、欧州諸国など、多くの国々と多角的な関係を築いていくことが不可欠である。
菅首相は、首相になる以前の著作において、日米同盟を重視し信頼関係を強めるとともに、日本の戦後外交に主体的な発想が乏しかったことを指摘し、もう少しマルチの関係をつくっていく方向にジワッ、ジワッと進めていくことが必要、と述べている(菅直人 『90年代の証言 市民運動から政治闘争へ』288頁)
要するに、急激な反米路線でもなく、かといって対米追従でもない、日米同盟を堅持しながら徐々に多角的な関係を他の国とも構築していくということだろうが、この決議文についても菅首相は以下のような所信を述べいる。
<<
ただいまの御決議に対して所信を申し述べます。
政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を十分に体しまして、日独関係を一層緊密なものへと発展させるとともに、欧州諸国との関係を強化し、世界の平和と安定を実現すべく、最大限の努力を払っていく考えであります。
<<
『日独交流百五十周年に当たり日独友好関係の増進に関する決議に対する菅内閣総理大臣の所見』
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/topics/ketugi110422(3)-2.html?OpenDocument
「公共財としての日米同盟」ということを菅首相はかねがね言っており、日米同盟も重視しているが、と同時に、じわじわとこのようにドイツ等の国との関係強化に最大限の努力を払っていくことは、二十一世紀の日本にとって非常に重要な事であろう。
過激な反米主義でもなく、かといって対米一辺倒でもない、じわじわとした多角的関係の強化こそ、まともな愛国心と知性を持った人間ならば、支持すべきことではなかろうか。