是々非々が大事

退陣の歴代内閣、心境を分析
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011010700916


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菅首相は、発足1年前後で自ら退陣した安倍、福田、鳩山の各内閣などを念頭に「小泉純一郎元首相より長くやった人と短くやった人がいるが、辞める原因は何となく分かる」と指摘。「頑張っているのに評価されず、思いが伝わらないことで、『これ以上やってもだめだ』と気持ちがなえる」と解説してみせた。
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たしかに、首相の座というのは孤独だし、叩かれるものなのだろう。

戦後で長期政権だったといえば、吉田茂佐藤栄作、中曽根さん、小泉さんなどだけれど、たしかにこれらの人は並外れてタフというか、あんまり世の批判を気にしないようなところがあったのかもしれない。
他にもいろんな要因があるのかもしれないが、まずは精神のタフさや、世論に一喜一憂しない別の価値基準や信念が自分の中にないと、とても首相の座は務まらないのだろう。

菅さんの是非や今までのところの業績への評価はとりあえず置くとして、あんまりころころ短期間で首相が変わるのは見苦しいし、継続した政治ができない気がする。

政府への適切な批判や監視はもちろん大事だし、批判精神を持つことは民主主義にとって決定的に重要なことだ。
しかし、マスコミや一般国民も悪口雑言ばかり投げつけるのではなく、是々非々で、個別具体的に良いものは誉め、悪いものは批判することが大事なのではないかと思う。
そうでなければ、首相や政治家というものもあまり伸びないし、第一やる気を失うのではなかろうか。

批判の種はそれこそ多くの人が見つけて批判しているし、私も菅さんに対していろんな疑問やもっとこうすればと思うことは多々ある。
ただし、今までやったことの中から探すならば、諫早開門の決断や、硫黄島の遺骨収集に取り組んだことは立派なことだと思う。

また、年頭所感において掲げている三つのビジョン、つまり、

1、「平成の開国」 TPPなどの自由貿易の促進

2、「最少不幸社会の実現」 病気・貧困・失業などの最少化

3、「不条理を正す政治」 個別の未解決の問題に特命チームを設置


の三つのビジョンも、具体的な実行は今後のこととはいえ、ビジョン自体は今の日本にとって正しいものだと思う。


私は基本的には消費税増税に反対なので、もし菅さんが消費税増税を掲げるならば断じて反対だし、先の参院選でも民主党には投票していないのだけれど、とりあえず消費税増税を短兵急に掲げるのではなく、地道に上記三つのビジョンに取り組むのであれば、あんまり早期の退陣を求めるよりは、是々非々でマスコミや国民も注意深く見守る方が良いのではなかろうか。

現在のところ、菅さんに具体的に取って代わりうる勢力といえば、与党内の小沢派か野党では自民党しか事実上あるまい。
しかし、その二つがそんなに菅さんと違うビジョンやより格別に素晴らしいビジョンを掲げているとも思えない。

小沢さんの掲げるビジョンは、全体として漠然としていてよくわからず、ところどころ良いことも言っているし大きな期待を持たせるようなところもあるが、菅さんを引きずりおろして取って代わろうと思うのであれば、菅政権とは違う政策理念をもっと緻密に詳細に用意して国民に提示しないと、どうも今のままでは何のために党内であそこまで争うのかよくわからないところがある。
自民党も同じことで、消費税増税自民党も掲げていることだし、先の衆院選での敗北をどう受けとめ、それ以前の長い自民党政治の何を継承し何を批判的に検討して克服しようとしているのか、もっと詳細にきちんと議論して政策理念を国民に提示しないと、また復帰してもかつてとあまり変わらないということになろう。

もともと、前の鳩山政権の政策は、外交・安全保障は別にして内政面では基本的に麻生政権の引き継ぎが多かったことはみんなの党竹中平蔵さんなどが指摘していることで、そんなに大きな違いがあったわけではない。

もちろん、確実にもっと良くなるという見通しがあれば、菅さんに早期退陣してもらって、もっと別の詳細精緻な政策理念を掲げる指導者に交代してもらった方が良いと思うが、どうなのだろう。

結局、今のところ、国民は消極的に何かを消去法で選択するぐらいしか選択肢がない。
また、マスコミは大雑把な情報やどうも政局絡みのニュースが多いので、マスコミの情報ばかりではなく、自分でネットなどを通じて、政治家の訴える理念や話に直接耳を傾けて選択することも大事な気がする。

批判やこうした方が良いという意見があれば、一応首相官邸のHPに国民の声を募集する欄もあるので、幕末に老中の阿部正弘に対して諸藩の藩士が建白書を出したように、具体的に政策を書き記して送ってみたら良いような気もする。
http://www.cao.go.jp/sasshin/kokumin_koe/uketsuke.html

菅さんの肩を持つ義理は何もないけれど、たしかにちょっとこのところ安倍さん以降短期間の首相があまりにも続くので、マスコミや国民ももうちょっと是々非々の判断や場合によっては良いことを誉めることも大事なのではないかなあと思う。
もちろん、首相や政府にも、良いところを実際につくってそれをたくさん増やしてもらわないことには、あんまり誉めようがないのも確かなのだけれど。