BS4で放映されていた『
オスマン帝国外伝』のシーズン4の最終話を見た。
シーズン4までなので、これですべて見たことになる。
トルコでは2011年~2014年にかけて放映されたそうで、日本のBS4ではシーズン1が2019年に放映され、その時から視聴した。
最後まで見終わると、なんとも感慨深かった。
『
オスマン帝国外伝』は16世紀初頭のトルコが舞台で、主人公は皇帝のス
レイマンと、その妃となったヒュッレムの二人である。
その他に大宰相のイブラヒムなど、実在の人物たちが登場し、もちろん脚色されながらも、その数奇な人生がよく描かれていた。
私は今までトルコや中東の時代劇はほとんど見たことがなかったが、『
オスマン帝国外伝』はとても面白かった。
このドラマの影響で、ちょっとずつだが
トルコ語を勉強し始めた。
いつかトルコに行ってみたいと思う。
にしても、最後まで見ると、
諸行無常というか、人生は苦だなぁとしみじみ思わされた。
ス
レイマンは
オスマントルコの最盛期を築いた名君で、ドラマでも寛容で公正で法を重んじ、
イスラム教徒のみならず帝国の臣民として
キリスト教徒や
ユダヤ教徒の権利も大事に保護し、多様性を重んじた様子が描かれていた。
また、勇敢で、帝国の版図を大いに広げた。
そうした成功や栄光に満ちた人生のはずだったけれど、晩年は個人的には悲惨だったようである。
皆が跡継ぎになると嘱望していた聡明な長男のムスタファを謀反の疑いでス
レイマンは処刑し、ムスタファを慕っていた末っ子のジハンギルも、もともと障害があって体が弱かったこともあり、ムスタファの死のショックで死んでしまう。
ス
レイマンが跡継ぎにと思っていた次男のメフメトも早世するし、勇敢で人望が厚かった四男のバヤジトも謀反の疑いで結局死刑にしてしまう。
跡を継ぐ三男のセリムは飲んだくれで酒ばかり飲んでいて、ス
レイマンの晩年は家庭的には極めて悲惨ななものだった様子がドラマでは描かれていた。
また、幼い時からの最大の腹心で親友だった大宰相のイブラヒムも、ス
レイマン自身の決断で唐突に処刑してしまい、その後ずっと罪の意識と寂寥感に苛まれていた様子が描かれていた。
イブラヒムは実在の人物で、奴隷の身から28歳で大宰相に成り上がり、43歳で突然処刑され、今は墓の場所もわからないそうである。
また、ス
レイマンの寵妃のヒュッレムは、このドラマの主人公であり、才気と美貌を武器に奴隷の身から成りあがって、数多のライヴァルを蹴散らし、謀略の限りを尽くす悪辣な面と、不思議な愛嬌と度胸と魅力も描かれていて、ス
レイマンとの愛がこの物語の主旋律だったが、ス
レイマンよりも先にヒュッレムは病気で死んでしまう。
結局、ス
レイマンは晩年は本当に孤独で、
痛風による体の不調や激痛にも悩み、最後は悲惨な様子だった。
人生というのは結局最後は、独りで死んでいかなければならないし、運命や業としか言いようのない流れにより、自分でも思ってもみなかった悪業を犯して苦しんでしまう場合もあるのだろうと、見ながらしみじみ思わされた。
普通の庶民に生まれて家族仲良い方が、よほど幸せなんだろうなぁとあらためて思われた。
ただ、ス
レイマンが他のさまざまな王朝の皇帝たちと異なって、もろもろの悲惨さにもかかわらず、魅力ある印象に残る皇帝だった側面は、ヒュッレムへの愛は真実であり、ムヒッビーという筆名で多くの詩をヒュッレムに捧げたところだと思われる。
ヒュッレムも悪事の限りを尽くしながら、ス
レイマンと我が子に対しては限りない愛をそそいだところが、人間を簡単に善悪では測れないむずかしいところと言えようか。
おそらく架空の人物と思われるが、宦官のスンビュルという人物が良い味を出していて、次々に登場人物が入れ替わる長い物語の中で、シーズン1から最後までずっと生き残って登場し続けていた。
スンビュルは小さい頃に誘拐されて去勢されて宦官にさせられたという設定だったけれど、ジハンギルなどに対して本当に深い愛情をそそいでいる様子がよく描かれていて、『
ダウントン・アビー』のカーソンと相通じるような、のちの時代から単純にははかれない深い愛情が宦官や使用人と主人の間に通う場合もあったのかなぁと思われた。
もちろん、ほとんどはそうではなくて、単なる支配・被支配の冷たい関係が多かったのだろうけれど、諸般の事情でそうでない場合も稀にありえたのかもしれない。
『
オスマン帝国外伝』の他の、トルコや中東地域の時代劇も、そのうちまたBSなどを放映して欲しいと思う。
https://www.bs4.jp/ottoman4/