映画 「蟻の兵隊」

蟻の兵隊 [DVD]

蟻の兵隊 [DVD]

すごい映画だった。
山西省日本軍残留問題についてのドキュメンタリー。

恥ずかしながら、私はこの映画を見るまで、この問題について全然知らなかったのだけれど、日本の敗戦後三年以上、中国の山西省に上官の命令によって二千六百名以上の日本兵が残留し、命令にもとづいて作戦行動を行い、現地の国民党軍に味方して共産党軍と戦っていたそうである。

その結果、五百名以上の日本兵が、日本の終戦後の三年ほどの間に戦死したそうだ。

しかし、それは澄田𧶛四郎陸軍中将と国民党の閻錫山との間の密約に基づくもので、澄田は自分だけ部下の将兵を置き去りにして戦後四年後に日本に帰り、この映画に登場する方々は玉砕を命じられ、捕虜になったあと五年間、つまり日本の終戦後九年経ってやっと日本に帰ることができたという。

しかし、日本政府は澄田の証言にもとづき、山西省日本兵たちは命令ではなく自発的に傭兵あるいは志願兵として残って戦闘に従事したものとして、一切の賠償や恩給の支払いを拒んできたそうである。
この映画に出てくる人々は訴訟を起こしたが、高裁も最高裁も認めてくれず、敗訴した。

主人公の奥村和一さんは、真実を明らかにしたいと山西省を再び訪れ、古文書を調査するが、それと同時に、かつて自分が初年兵としてはじめて人を殺した場所なども訪れ、現地の当時のことを知る人々の話を聞く様子もこの映画にはおさめられている。
その中で、日本軍にひどい目にあった中国人のおばあさんが、奥村さんに対して言う言葉は、胸打たれた。
中国の底辺の民衆の、本当の強さと優しさをそのおばあさんに見た気がした。

それにしても、日本は、かつての軍部も、今の司法も、どうなっているんだと、この映画を見ているとつくづくため息をつかざるを得ない。
義はどこにあるのだろう。


十年前の映画だけれど、多くの人に見て欲しいと思った。

戦争は人を鬼にする、という言葉も忘れてはならない言葉だと思った。
ともかく、このようなことが二度とないために、戦争だけは繰り返してはならないのだと思う。