- 作者: 宮良瑛子
- 出版社/メーカー: 汐文社
- 発売日: 1998/03/01
- メディア: 単行本
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これは涙なしには読めない絵本だった。
「海鳴りの像」という像が沖縄にあるそうである。
そこに、三つのお人形を胸に抱いてお参りするおじいさんとおばあさんがいた。
その人形は、五十年の間大切にされてきたものだった。
おじいさんとおばあさんの娘だった可奈子は、当時国民学校の四年生で、とてもかわいい元気な、絵が好きな女の子だった。
しかし、ある日、港の景色を無邪気に絵に描いて学校に持っていったら、それを軍人に怒られ、ビンタされて、倒れた時に頭をぶつけて、それ以来、耳が聞こえなくなってしまった。
それからは、大好きだった絵も描かなくなり、あまり笑わなくなって、家にこもって人形ばかりつくるようになった。
兵隊にいった兄や、九州の工場に勤労動員で向かった姉を思って、人形をつくった。
米軍が上陸し、家族は必死に逃げ惑ったが、耳の聞こえなかった可奈子は爆弾で死んでしまう。
戦争が終った後に、兵隊にいった兄は戦死し、九州の工場に向かった姉は船が沈められて死んでいたという通知が来た。
お父さんとお母さんは、他の人々と一緒に、その「海鳴りの像」をつくり、三つの人形を胸に持ってお参りに来た。
という御話だった。
正直、あまりにかわいそうで、涙を禁じ得なかった。
それにしても、日本の軍隊というのは、いったい何を守るために沖縄に行ったのだろう。
もちろん、中には立派な人もいたかもしれないが、沖縄でしばしば聞く話のひどさには、根本的にこの疑問を持たざるを得ない。
二度とこのようなことがあってはならないと、あらためて思った。