チューダーズ <ヘンリー8世 背徳の王冠> DVD-BOX1
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2011/09/02
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チューダーズを全話見終わった。
最後まで見ると、世の無常をひしひしと感じる。
若さも去っていくし、人生とは王であってもままならないものなのだろう。
チューダーズが見てて面白いところは、どの登場人物にも、等しくあるがままにまなざしがそそがれていて、立場や信条に関係なく、人間として描いてあるところだと思う。
どの人も、けっこう最期は哀れなものだなぁと見てて思った。
前半では、サム・ニールが演じるウルジーがとても印象的だった。
ウルジーは、末路は哀れで、心に残る人物だった。
他の登場人物がけっこう悪辣で多くの人を殺しているのに対し、ウルジーは腐敗していただけでこれといって人を殺してはいない人物だったとあとでしみじみ思いだされた。
アン・ブーリンも、圧倒的な存在感があった。
処刑の時には、思わず涙。
栄華を極めてた時はどうしようもなく性格が悪くて傲慢な人間のようだったけど、最後は本当に立派だった。
人はやっぱり、死に際が大事なんだろうなぁと見てて思った。
「恩寵の巡礼」のロバート・アスクらの反乱のあたりも面白かった。
ヘンリーやサフォークやクロムウェルらが、アスクたちをだまして弾圧する際の容赦なさとえげつなさに、権力者ってのは本当に信用ならんもんだなぁとあらためてしみじみ思った。
トマス・クロムウェルの失脚と処刑のあたりも印象深かった。
最期はあわれなものだった。
一時は権勢を振るっても、人は儚いものだとしみじみ思う。
アン・ブーリンを処刑に追い込まない方が、クロムウェルらにとっては良かったように思う。
宗教改革には熱心だったのだろうけれど、結局は歴史の歯車の中で自身潰されてしまったのだろう。
キャサリン・ハワードも印象的で、本当に愚かでどうしようもなかったけれど、最期に、「この世界は美しい」ということを言ってたのにはほろりときた。
本当にそんな記録があるのかは知らないし、たぶんフィクションなんだろうけれど、胸打たれるものがあった。
もっと良い環境に生れ、良い人が周囲にいてくれたら、キャサリン・ハワードの人生ももっと違っていたのだろう。
ロッチフォード夫人も、本人自身がものすごくねじくれていて悪いのだけれど、ああならざるを得ない哀れな運命があったような気もする。
カルペパーやデーラムも、自業自得とはいえ哀れだった。
サフォークは、このドラマでは、一貫して人間味のある、唯一新旧両宗派の狂信を免れている人物として描かれていた。
聖書もろくに読んだことがなく、体育会系で恋愛にしか興味がない馬鹿で軽薄な人物だけど、ヘンリー八世への友情だけは一貫してて、新旧両派のはてしもない確執と凄惨な争いと熱狂を見ていると、サフォークみたいな人物こそ最もまともな人間のような気も回を追うごとにしていった。
「死んでしまうと、敵でさえなつかしくなる。」
とサフォークが年をとってつぶやくところは、感慨深かった。
メアリー・チューダーやエリザベスも、本当によく似合っていたと思う。
それにしても、ヘンリー八世とはなんだったのだろう。
暴君だったのか、天才だったのか。
後先を考えずに好き勝手だけしていたのか、それともイギリスの独立と繁栄の礎を築いた名君だったのか。
グリーン・スリーブスを作曲し、主の祈りの祈祷文の中の頌栄の部分を制定し、カトリックから国教会を独立させ、ノンサッチ宮殿を設計し、外交や戦争でもおおむね成功をおさめたのを見ると、なんとも不思議な人物だと思う。
だが、本人が幸せだったかはまた別の問題で、好き勝手して六人もの結婚を繰り返しながら、悔いも多い人生だったのだろうと見てて思った。
人生とは誰でもままならぬものだけれど、それでも力の限りに生きたあの時代の人は、あらためて興味深いと思った。