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南北朝の騒乱を描いた『太平記』を上中下の三巻本で漫画化してあり、とても面白かった。
読んでの感想は、阿野廉子が単なる悪女というより、あの時代ではある意味すごい意志と個性の強いバイタリティのある女性だったんだろうなぁということと、新田義貞の哀れさである。
なんとなく、阿野廉子はただただ悪女と思っていたのだけれど、そういう面もあるけれど、彼女なりに必死だったんだろうなぁと思ったし、新田義貞も必死にがんばったが諸般の事情でいつも残念な結果に終わらざるを得なかったんだろうなぁと思った。
比叡山で奮戦していた新田義貞が、後醍醐に見捨てられそうになるあたりは、読んでいてあまりに気の毒で胸が詰まった。
あと、あらためて、足利尊氏は、肝心な時に勝つところがすごいと思った。
わりとしばしば敗けることもあるし、めちゃくちゃだったり、無責任で気弱な時もしばしばあるのに、ピンチになると異常な力と輝きを放って肝心な時に決定的な勝利を得る足利尊氏は、やはり日本史の中でも稀な人物だったのかもしれない。
また、赤松円心のしぶとさや手強さも印象的だった。
ああいう人物をきちんと手なずけることができず、その恨みを買ったあたりが、後醍醐の失敗の大きな原因だったのだろう。
また、新田義貞もあまり赤松に関わらなければ良かったのにと思う。
若い時は、楠木正成や北畠顕家などの、本当に真直ぐで凛々しい武将に魅力を感じたし、それは今でも同じであらためてこの二人は本当の武士だったと思うけれど、年をとってくると、足利尊氏や赤松円心や新田義貞にも妙な魅力を感じるような気もする。
というのは、彼らは人間の難しさや手強さや、どうにもならなさや、しぶとさを、よく具現しているような感があるからだ。
きちんと原文も読み進めたいと思うし、また北方謙三の南北朝モノをいろいろ読みたくなった。
それにしても、この南北朝の騒乱の徒労感とめまぐるしさは、ある意味、この二十年ぐらいの、小選挙区制導入後の日本とよく似ているのかもなぁ。