絵本 「ブルンディバール」

ブルンディバール

ブルンディバール

物語の筋は単純な絵本で、病気のお母さんを元気にするためにミルクを買おうとするが、お金がない兄妹は歌をうたって町で稼ごうとする。
しかし、それを邪魔するブルンディバールという悪者を、他の大勢の子どもたちを集めてみんなでやっつけて、それから無事に歌をうたってお金を集めることに成功する、というストーリーだ。

しかし、この絵本の登場人物たちが、何か不思議な格好をしていたり、その服にダビデの星がついている。

実は、この物語は、第二次大戦中、テレジンという収容所の中で、ユダヤ人の子どもたちが五十五回にわたって実際に上演した物語を絵本にしたものである。

テレジン収容所には、一万五千人のユダヤ人の子どもが集められたが、戦後まで生き残ったのはたった百三十二人だったという。

この物語は、一見単純なようで、深い願いと希望をこめて当時収容所の中でみんなを励ますために演じられたのだろう。

そうした背景を思って読むと、なんとも胸を打つ。

今の世の我々も、みんなで力を合わせれば、悪を倒すことができるということを忘れず、そうした勇気や希望を失わないようにしないと、なんともこの時代の犠牲者に対しても恥ずかしい気がしてくる。