絵本 「スイミー」

スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし

スイミー―ちいさなかしこいさかなのはなし

この「スイミー」の物語は、たしか私が小学生の、一年か二年の国語の教科書に載っていた。

また、私が小さい頃は、よくテレビのCMで、「スイミー」という金魚のえさの宣伝があっており、「スイミースイミー、よっく食べる、よく食べる、スイミー」という音楽もかすかに覚えている。

というわけで、よく覚えていたつもりだったのだが、今回とてつもなく久しぶりにふと読み直してみると、忘れていた、あるいは当時気付いていなかったことがあった。

それは、スイミーはまず、最初の仲間たちが全滅し、そのあとさまざまな広い世界を見て、そのあとで出会った仲間たちと知恵をしぼって、あの自分が目になってみんなに大きな魚の体のようになってもらう、という作戦を考え出したということだ。

最初の方は、非常に危険な目にあっているし、大きな世界を見てきている、ということを、てっきり忘れていた。

スイミーが知恵を得て発揮するためには、それだけの体験が必要だったのだろう。
また、その体験を無にせず、生かしたところがスイミーの偉いところだったのだと、今回あらためて思った。

幼児向けの物語は、意外と深いものである。

それにしても、情けないのは、人間には往々にして、手ひどい失敗をしても、少しも団結が深まることもなく、かえって分裂しますます愚かになる場合もあることである。
大きな敵と戦って生き残るためには、内輪で争っている暇などなく、失敗と広い世界で得た知見を生かし、「スイミー作戦」で団結してひとつにまとまってこそ、生き残っていけるのだろう。

大人にこそあらためて読んで欲しい名作と思う。