歌 「ジョン・ブラウンの身体」(John Brown's Body)

日本人で、おそらくこの歌を聞いたことがない人はいない。



「ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた〜♪」


という歌詞でも聞いたことがあろうし、


「そーらにはお日様〜、足元に地球〜♪」


というバージョンでも幼稚園の頃など歌った記憶がある。


ヨドバシカメラの宣伝でも、「新宿西口駅の前、カメラはヨドバシカメラ」というCMを小さい頃はしょっちゅう見たものだった。


やや大きくなってから、「リパブリック讃歌」というアメリカの歌だということは知った。


だが、それ以上のことは知らずにいたら、実はこの歌、「リパブリック讃歌」になる前は、もともと、南北戦争の時の「ジョン・ブラウンの身体」(John Brown’s Body)という歌だったそうだ。


ジョン・ブラウンという人物は、南北戦争の少し前、黒人奴隷制の廃止を主張し、奴隷制を倒すためにほんの二十名ぐらいの仲間とともにハーパーズ・フェリーというところで武装蜂起し、あえなく鎮圧されて絞首刑になった人物。


当時も、そして今もって、その評価が難しい、評価の分かれる人物だそうで、黒人奴隷解放のための偉大なる先駆者という見方もあれば、気の狂ったテロリストという見方もあるようである。


その人生は事業の行き詰まりから破産したこともあったようだし、貧乏子だくさんでやたらたくさん子どもがいたようだ。
その一方で、唐突なことではなく、筋金入りのアボリショニスト(奴隷制廃止論者)で、横暴な奴隷制支持者とずっと前から実力行使で闘い続けていた人物でもあったようである。
ハーパーズ・フェリー襲撃事件で逮捕された後の公判でも、堂々と自らの主張を宗教的な信念とともに論じ続け、北部には感銘を、南部には激昂をもたらしたそうである。


リンカーンフレデリック・ダグラスたちはジョン・ブラウンの暴力行使には反対だったようだ。
理念としては共感していても、方法には反対だったのだろう。
正義のために実力を行使するか、それともあくまで非暴力を貫くかは今日でも難しい問題である。


ただ、ジョン・ブラウンの一件が南北戦争を早めたし、先駆となったことは間違いないようである。
日本で言うならば、大塩平八郎みたいなものなのだろう。


歌の歌詞は二種類あって、軍歌で歌われた素朴な形のものと、ウィリアム・パットンという十九世紀のアボリショニスト(奴隷制廃止論者)がつくった歌詞と、二種類ある。
どちらも、訳してみたが、なんだか胸を打つものがある。


小さい頃、何気なく歌い、聴いていた歌の背景には、こんなに深い歴史があったんだなぁ。



ジョン・ブラウン」(ウィリアム・パットン)


なつかしいジョン・ブラウンの身体はお墓の中で朽ちている。
彼がそのためにすべてを危険にさらした、奴隷のくびきのもとにある子どもたちはすすり泣いている。
奴隷たちのために闘って彼は命を棄てたけれども、
彼の魂は進み続けている。


ジョン・ブラウンは英雄だった。くじけない、真実の、勇気ある英雄だった。
ジョン・ブラウンが奴隷たちの権利のために闘った時、
カンザス州の人々は、ジョン・ブラウンの勇猛果敢さを知った。
今は、ジョン・ブラウンのお墓の上を緑の草が覆っているけれど、
彼の魂は進み続けている。


ジョン・ブラウンは、十九人というあまりにも少ない人数で、ハーパーズ・フェリーを占領した。
ジョン・ブランは、旧態依然としたヴァージニア州をわななくまでに脅かした。
人々はジョン・ブラウンを裏切り者として絞首刑にした。
彼ら自身が本当は裏切り者なのに。
しかし、ジョン・ブラウンの魂は、進み続けている。


ジョン・ブラウンはキリストに洗礼を授けたバプテスマのヨハネだった。そう私たちは見るべきだ。
奴隷たちのキリストとなる人は、解放者にならねばならない。
すみやかに太陽の照りつける南部で、奴隷たちが全き自由を得なければならない。
ジョン・ブラウンの魂は進み続けている。


ジョン・ブラウンが先駆となったこの闘争を、ジョン・ブラウンは天国から見ている。
赤と白と青の、星条旗の軍隊を。
そして、天国は、ジョン・ブラウンが目指した行いを祝福し讃美歌を歌っている。
ジョン・ブラウンの魂は進み続けている。


自由の戦士たちよ、打て、打つんだ。
圧制を終らせるための一撃には、戦うことが良い時代であり方法だ。
なつかしいジョン・ブラウンが始めてくれた夜明けが、今や光り輝く真昼となっている。
そして、ジョン・ブラウンの魂は進み続けている。



John Brown by William W. Patton


Old John Brown’s body lies moldering in the grave,
While weep the sons of bondage whom he ventured all to save;
But tho he lost his life while struggling for the slave,
His soul is marching on.


John Brown was a hero, undaunted, true and brave,
And Kansas knows his valor when he fought her rights to save;
Now, tho the grass grows green above his grave,
His soul is marching on.


He captured Harper’s Ferry, with his nineteen men so few,
And frightened "Old Virginny" till she trembled thru and thru;
They hung him for a traitor, themselves the traitor crew,
But his soul is marching on.


John Brown was John the Baptist of the Christ we are to see,
Christ who of the bondmen shall the Liberator be,
And soon thruout the Sunny South the slaves shall all be free,
For his soul is marching on.


The conflict that he heralded he looks from heaven to view,
On the army of the Union with its flag red, white and blue.
And heaven shall ring with anthems o’er the deed they mean to do,
For his soul is marching on.


Ye soldiers of Freedom, then strike, while strike ye may,
The death blow of oppression in a better time and way,
For the dawn of old John Brown has brightened into day,
And his soul is marching on.



ジョン・ブラウンの身体」


ジョン・ブラウンの身体は墓の中に朽ちて横たわっている。
ジョン・ブラウンの身体は墓の中に朽ちて横たわっている。
ジョン・ブラウンの身体は墓の中に朽ちて横たわっている。
しかし、ジョン・ブラウンの魂は進み続けている。


栄光あれ、栄光あれ、ハレルヤ。
栄光あれ、栄光あれ、ハレルヤ。
栄光あれ、栄光あれ、ハレルヤ。
そして、ジョン・ブラウンの魂は、進み続けている。


ジョン・ブラウンは、十九人とともに本当にハーパーズ・フェリーを占領した。
ジョン・ブランは、旧態依然としたヴァージニア州をわななくまでに脅かした。
人々はジョン・ブラウンを裏切り者として絞首刑にした。
彼ら自身が本当は裏切り者なのに。
ジョン・ブラウンの魂は、進み続けている。


ジョン・ブラウンは神の軍隊の兵士となった。
ジョン・ブラウンは神の軍隊の兵士となった。
ジョン・ブラウンは神の軍隊の兵士となった。
ジョン・ブラウンの魂は、進み続けている。


ジョン・ブラウンは奴隷たちを自由にするために死んだ。
ジョン・ブラウンは奴隷たちを自由にするために死んだ。
ジョン・ブラウンは奴隷たちを自由にするために死んだ。
しかし、ジョン・ブラウンの魂は、進み続けている。


天の星々が今や優しく見つめている。
天の星々が今や優しく見つめている。
天の星々が今や優しく見つめている。
なつかしいジョン・ブラウンのお墓を。


“John Brown's body”


John Brown's body lies a-mould'ring in the grave,
John Brown's body lies a-mould'ring in the grave,
John Brown's body lies a-mould'ring in the grave,
But his soul goes marching on!


Glory, glory Hallelujah,
Glory, glory Hallelujah,
Glory, glory Hallelujah,
And his soul goes marching on!


He captured Harper's Ferry with his nineteen men so true
He frightened old Virginia till she trembled through and through
They hung him for a traitor, themselves the traitor crew
His soul is marching on


He's gone to be a soldier in the Army of the Lord,
He's gone to be a soldier in the Army of the Lord,
He's gone to be a soldier in the Army of the Lord,
His soul goes marching on.


John Brown died that the slaves might be free,
John Brown died that the slaves might be free,
John Brown died that the slaves might be free,
But his soul goes marching on.


The stars above in Heaven now are looking kindly down,
The stars above in Heaven now are looking kindly down,
The stars above in Heaven now are looking kindly down,
On the grave of old John Brown.