城山三郎 「逆境を生きる」

逆境を生きる

逆境を生きる


とても良い本だった。

初心が魅力をつくるということや、魅力のない人というのは要するに型にはまった人だということ。

初心を持ち続けるとは、自分に安住せず、自分を無にして、人から受信し、吸収しようとする生き方であること。

その事例として、御木本幸吉や渋沢栄一らの人生が語られて、とても面白かった。

人は自分の性格にあった出来事にあうし、生き方の積み重ねだということも、なるほどっと思った。
今置かれた場所で、吸い取れる限りのものを一切合財吸収しようとする姿勢が、渋沢栄一らの大成の秘訣だったのだろう。

また、毛利元就を例に引いての「丁寧に戦う」ということも心に残った。

小説は描写がすべて、ということと、人と付き合おうが付き合うまいが最後は作品、というのもなるほどっと思った。

とにかく挑戦すること、準備を大事にすること、信用を大事にすること、というのも、なるほどーっと思った。

また、城山三郎さんが語るところの、広田弘毅浜口雄幸のエピソードは本当に胸打たれるものが多く、立派な人たちだったんだなぁとあらためて感心した。

人が折れずに生きていくには、セルフ(自分の世界を持つこと)、インティマシー(家族や親しい人の支え)、アチーブメント(目標を持って達成すること)の三つが柱となる、というのも、なるほどーっと思った。

人間の魅力は「その人の”強さ”」「強く生きること」というのも、なるほどっと思った。

そして、確かに、城山さんがこの本の中でいろんなエピソードとともに語っていた人々は、そうした心の強さを持っていた人たちだったと思うし、城山さん自身そうだったと思う。

本当の強さとは、おそらく、上記のことをひっくるめて、人間として高貴に、そして優しく、責任感をもって生きぬく中に生じてくるものなのだとこの本を読んでいて思えた。

とても良い一冊だった。