- 作者: 佐々木毅
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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良い本だった。
人間的な現実をつくりだしているのは他ならぬ人間自身であり、継続的に「学ぶ」ことにより、「可能性の束」としての現実を変えていくことができる。
何か超越的な真理を把握してそこから現実を一挙に変えようとするのではなく、そのつど「学び」続けて、可能性の束としての現実に取り組む「精神的スタミナ」の大切さ。
自らの生の可能性にとことんこだわる生き方が「学ぶ」ということ。
などなどのメッセージは、なるほどーっと思った。
福沢諭吉の議論を辿っていく中で述べられる、物事の道理を弁えることに学問に意味を求め、「不審を質すの勇」を持たなかった封建時代からこの勇気を持つのが文明の時代であり、私徳から公智・大智を振うのが文明社会、という福沢の議論は、あらためてとても魅力的で鋭いと思う。
また、
学ぶ側がその気にならない限り、また学ぶ側がそれなりの視点を持っていないと、話は始まらない、
ということや、
勉強はわかることの再確認、学ぶことに¥はわからないことへの挑戦、
というのは、なるほどーっと思った。
問題は与えられるものではなく、構成され、確立される、つまり「見立て」が必要なものだ、というのも、なるほどーっと思った。
技術的合理性とは異なる、公式化されない知、慎慮の領域が大事だと言うのも、本当にそのとおりと思う。
いろいろと思考が整理され、刺激される、良い一冊だった。