沖縄戦の日 式典で読まれた詩

今日の式典で朗読されたという、沖縄の高校生がつくったという詩に心打たれた。


今日は、沖縄戦の日。


野田さんも言及していたけれど、あらためて太田中将の遺言を思う。


天皇皇后両陛下は、毎年必ず、六月二十三日と、八月六、九、十五日は断食されると聴いたことがある。


沖縄県の人だけでなく、日本国民全員が、せめても今日ぐらいは、あらためて沖縄戦の悲惨さと、多くの人々の流した血の涙を思い起こし、各自自分なりに何をすべきかを考え直すべきなのだろう。


今日、朗読されたという、沖縄の高校生の方がつくったという以下の詩には、本当にとても胸打たれた。


沖縄戦で死んでいった人々も、いまいろんな不条理な事故や事件に巻き込まれて苦しんでいる人、その恐怖にさらされている人々は、皆、ただ名前や数字じゃなくて、生身の、いろんな思いを抱えた人であることを、決して忘れてはならないのだと思う。




「礎(いしじ)に思いを重ねて」 (金城美奈)


月桃(げっとう)の花が白くきらめく頃
私はあの手紙と出逢(であ)った
それは祖父の兄が家族に宛てた
一通の手紙
彼の人生で家族に送った
最後の手紙


第三中学校から届いたその手紙には
戦争のことは
何一つ書かれていなくて
勉学に励み
家族を思いやる
真っすぐな青年の心が記されていた


これから迫る
黒い影とは対照的に
その手紙は温かく
誠実さで溢(あふ)れていて
白い光で包まれているようだった


この手紙と出会った後
私は初めて
彼の礎(いしじ)の前に立った


礎に刻まれた
その名前
ぎらぎらと太陽に照りつけられた
その名前
指でなぞると一文字一文字が
焼けるように熱くて
あなたの思いの強さが伝わってくる
私のこころに伝わってくる


礎に刻まれた
あなたの名前は
とても小さくて
とても窮屈そうで
この文字では表せないほどの人生が
あなたにはあった
この文字では抱えきれないほどの未来が
あなたには待っていた


でも何もかもを奪われてしまった


あなたが過ごしたあの島は
地図に書かれたあの島は
沖縄から遠くて離れていて
広大な海に囲まれている


あの遠い島から
あの広い海から
あなたはまだ戻らない
あなたはまだ戻れない


あの日から時は止まったまま
針は動かぬまま


あなたと同じくらいの歳(とし)を迎えた今
私は考えている
戦争について
平和について
でも
あなたと同じくらいの歳を迎えても
私は考えられない


遠い島で過ごすことを
家族と離れて暮らすことを
私は考えるのが怖い
だけど
辛い現実と向き合った
あなたがいるから
私は今安心して一日を迎えられる
明日が来るのを待つことができる


今年も時を刻む
六月二十三日
正午に手を合わせる私の肌を
柔らかな風が
そっと包み込み
確かな思いが溢れ出す


あの過ちを
二度と起こしてはならない
あの苦しみを
二度と蘇(よみがえ)らせてはならない


人々の心に
色をそえることができるなら
暗く沈んだ色ではなくて
明るく澄んだ色で彩りたい


人々の未来に
橋を架けることができるなら
先の見えない不安定なものではなくて
力強く進める丈夫なもので繋(つな)げたい


そして
人々の世界を
一つの言葉で表すことができるなら
戦争ではなくて
平和であると断言したい


六十七年前を生きた人々の後ろに
私たちは続いている
私たちにできることは
あの日を二度と呼び戻さないこと
私たちに必要なことは
あの日を受け止めて語り継ぐこと


礎に刻まれた人々の
届けたかった思い
叶(かな)えたかった願い


私たちが届けよう
私たちが叶えよう


礎に思いを重ねて



(引用以上)


本当、後世の我々が、本当の沖縄の静けさや平和のために、日本の本当の独立のために、この世界の平和のために、精一杯努力しなければ、先人たちに申し訳が立たないと思う。