増支部 第八集 二十三 呵哆(一)

支部 第八集 二十三 呵哆(一)


一、ある時、世尊は阿羅鞞阿伽羅婆(アーラーヴィアッガーラヴァ)制底に住したまえり。
ここに世尊は諸比丘に告げて言いたまえり―
諸比丘よ。
大徳よ。
とかの諸比丘は世尊に応えたり。世尊は説きたまえり―

二、諸比丘よ、呵哆阿羅婆(ハッタカ・アーラーヴァカ)は七の希有未曾有の法を成就せりと知れ。何をか七と為すや。

三、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は信あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は戒あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慚あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は愧あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は多聞なり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は捨あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慧あり。
諸比丘よ、呵哆阿羅婆はかくの如き七の希有未曾有の法を成就せりと知れ。
世尊はかくの如く説きたまえり。かく説きて善逝は座より起ち精舎に入りたまえり。

四、時に、一の比丘あり、晨朝時に下衣を著け鉢衣を持して呵哆阿羅婆の家に往けり、往きて設けの座に坐せり。
時に、呵哆阿羅婆はかの比丘のところに来れり、来りてかの比丘を敬礼して一面に坐せり。一面に坐せる時、呵哆阿羅婆にかの比丘は言えり―
友よ、汝は七の希有未曾有の法を成就せりと世尊説きたまえり。何をか七と為すや。(世尊言いたまわく)諸比丘よ、呵哆阿羅婆は信あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は戒あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慚あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は愧あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は多聞なり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は捨あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慧ありと。友よ、汝はかくの如き七の希有未曾有の法を成就せりと世尊説きたまえり。
大徳よ、その時、白衣の在家人ありしや否や。
友よ、その時、白衣の在家人あらざりき。
大徳よ、その時、白衣の在家人あらざりしは善し。

五、時に、かの比丘は友よ、呵哆阿羅婆の家において施食を受け座より起ちて去れり。時に、かの比丘は食後、受食より還り世尊の在すところに往詣せり。往詣して世尊を敬礼して一面に坐せり。一面に坐してかの比丘は世尊に白して言えり―
大徳よ、このところに我、晨朝時に下衣を著け鉢衣を持して呵哆阿羅婆の家に往けり、往きて設けの座に坐せり。大徳よ、時に、呵哆阿羅婆は我許に来れり、来りて我を敬礼して一面に坐せり。大徳よ、一面に坐せる時、呵哆阿羅婆に我は言えり。
「友よ、汝は七の希有未曾有の法を成就せりと世尊説きたまえり。何をか七と為すや。(世尊言いたまわく)諸比丘よ、呵哆阿羅婆は信あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は戒あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慚あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は愧あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は多聞なり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は捨あり、諸比丘よ、呵哆阿羅婆は慧ありと。友よ、汝はかくの如き七の希有未曾有の法を成就せりと世尊説きたまえり。」
大徳よ、かくの如く説けるに呵哆阿羅婆は我に言えり。
「大徳よ、その時、白衣の在家人ありしや否や。」「友よ、その時、白衣の在家人あらざりき。」「大徳よ、その時、白衣の在家人あらざりしは善し。」

六、善い哉、善い哉比丘よ。比丘よ、かの善男子は少欲にして自らにある善法を他人の知るを欲せず。
比丘よ、しからば呵哆阿羅婆は第八の希有未曾有の法を成就せりと知れ。いわく、少欲なり。