「泥仏放語百カ条」

清水公照さんという、昔東大寺の管長をされていた方の『華厳経入門』という本を読んでいたら、「泥仏放語百カ条」という、清水さんが華厳の教えを聴いて味わう中で折々に感じて書きためたという言葉が書いてあり、とても面白かった。
素晴らしい内容と思う。
繰り返し読みたい。



「泥仏放語百カ条」




1、 えび天 天かす 衣のねうち ―伝統保持の身
2、 雨の日も 風の日にも
3、 預かりもんでっせ
4、 とんだり はねたり
5、 うらやむほうが うらやまれる身でっせ
6、 気にせんときやす
7、 おかげさんだ
8、 関中忙
9、 よろこんでもらうよろこび
10、 おこりなはんなや
11、 おつづけなさいませ
12、 足のうら
13、 見物の物は 物の物でもあろうが 人物の物でもありまっせな
14、 生きるよろこびが芯にあるのが仕事
15、 聞かしてもらいなはれや 如是我聞
16、 受け入れてもらってよろこび 見はなされて教わる
17、 時のうねりというもんは 面白い
18、 腹がへったら なんでもうまい
19、 黙笑
20、 ぼやきがとまると ぼけがまわる
21、 遅々歩 遅々景
22、 問題に遊べばよい
23、 泥仏放光
24、 うっかり忘れているところに秘の秘があるんや
25、 火網三昧
26、 いつも見えるところが一番大切なところでっせ
27、 歳のうち ぼちぼち やんなはい
28、 おかげはん 生き甲斐
29、 生かされてあればこそ
30、 面っろいとこを伸ばしたら ええというこっちゃないかな
31、 そやそやと にこにこしていると すんなりいくもんでっせ
32、 いきが出入りしているのにフイッと気がついたら はっと納得できましょうぜ
33、 気張るといけまへんな
34、 そうでない自分が そうでありたいと願ってやまない
35、 よろこばにゃ なりまへん
36、 私の生命が 実は私の手の届かぬもの
37、 人に言うとむつかしくなるが 観音さんにたのむと にこにこしてくださっている
38、 二十四時間のなかには ずいぶん余った時間のあるもんや
39、 鎮魂洗垢
40、 今日無事
41、 腹を減らしてかかれ
42、 閑とはさらっとというところ
43、 「あいつ」と「こいつ」を抜け出る「脱」
44、 種々修福
45、 晴れもええし 雨もええがよ
46、 無理無用
47、 のりこぼし これ開山の椿とか
48、 歩々堂々
49、 ふとした ご縁で
50、 輪廻に よろこぶ
51、 生きてて よかった
52、 ほほえみの ひととき
53、 もっともやな
54、 しっかりやりや
55、 どもならん
56、 しゃあないなあ
57、 ぼけにも風格
58、 そやな
59、 どやねん
60、 是にも非 非にも是
61、 なーんでもないことによ 気がついたら しめたもんや
62、 なんの なんの
63、 すべっても ころんでも
64、 芽は みんなあるんでっせ
65、 そのまま そのまま そのまーんま
66、 そやけんどなー ええとこ もっとるぜ
67、 いじけちゃつまらん はねかえせ
68、 よういうてくだはった
69、 せめて 一人前に(と思うてきましたよ)
70、 そもそもこの指がよ(言うこと きいてくれまへんわ)
71、 そこあんばいとな
72、 どうも どうも
73、 ようなったやないか
74、 大丈夫やよ
75、 心の心ちゅうところかな―心の師―
76、 くわえて はなすな
77、 肉が こころを深め 心が 肉を躍らせる
78、 自由って?歩いてみなはれ
79、 満たされたものの不満ほど 処理しにくいものはないわな
80、 ひとの世話は 世話できるだけを よろこんでいればいいのよ
81、 泥まみれの手で 飯くいなはれや
82、 じたばた するなや
83、 金は金 銀は銀 鉛は鉛
84、 杉の山 渓のあゆ
85、 私のもので 私でないものといえば 預かりもんじゃろうて
86、 これでええちゅうところはないもんや
87、 道ひと筋 それもええが 道草も亦「妙」
88、 許してもらわにゃ しようおまへん
89、 気がついてみりゃ なんでもないこと
90、 ええ日も ええかげんな日も
91、 吉上上―上上吉
92、 おれにも ええとこがあるがよ
93、 そやそや
94、 根よう 繰り返しとるうちに 自分というのが消えてゆく
95、 生きてあるのが まったく不思議
96、 下りは要慎
97、 今が最高 ああでもない―こうでもない―と来たんやもの 千年もよ 一万年もよ
98、 ぼやいて 結構 よろこんどる
99、 秘とは 常のことなり あんまり近くは見えんもんや
100、 自分に「な」
一、 なまけるな
一、 おこるな
一、 いばるな
一、 あせるな
一、 くさるな
一、 おごるな
右六条 自戒 自守



清水公照華厳経入門』(光文社)(138〜142頁)