- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1978/08/08
- メディア: 文庫
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この本の中で、漱石は「自己本位」ということを言っている。
その意味は、別に自己中心ということではなく、
要は、自分が納得するまでとことんやれ、ってことだと思う。
機械的知識ではなく、血肉となった知識を持つようにしろ、ってことなんだと思う。
たぶん、自己本位という言葉も、そういう意味でこそ意味があるのであって、さほど自己本位ということに意味があるのでもなかろう。
かつての私は、自己本位という言葉につられて、どこかしら、何か、本当の自分や確固たる自我っていうものに憧れ、模索していたような気もする。
でも、学問というのは私心を去って、我見を排して事実に就くのが第一義である以上、自己に執するという意味での自己本位は、本来は厳しく排せられるべきものなのだと今は思う。
漱石は、ちょっと言葉がその点、後世の人には誤解しやすい言葉遣いだったような気はするけれど、きちんと読み直してみると、示唆に富むことが多い、やっぱりすごい良い内容だなあと思う。
とことん突き進んで、何かにぶち当たるまで探求しろ、っていうのは、本当に大事なことだと思う。
また、漱石がこの本で主張するところの「個人主義」、つまり党派ではなく理非によって判断し、自分を貴び他人を貴ぶ精神とは、要するに、福沢諭吉の言うところの「独立自尊」ということと同じと思う。
ただ、漱石が、個人主義には寂しさが伴う、ということを縷々述べているのに対し、福沢があんまり独立自尊に伴う寂しさなどは述べていないところは、二人の気質の違いといったものだろうか。
独立自尊という言葉の方が、私は個人主義というよりは若干好きな気もするが、寂しさが伴うというのは、漱石の方に共感する気もする。