- 作者: チャールズ・タウンゼンド,宮坂直史
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/09/06
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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テロについて、その歴史や概念定義の研究史や現状などをわかりやすく解説してあって、なかなか面白かった。
中でも、テロは、対外的な独立に関しては相手方が割りにあわないと思えば効果がある場合もあるが、国内の格差などの解決には資本家や既得権益が譲歩する動機があまりないのでテロの効果はあがらない、という指摘は興味深かった。
要するに、たとえば、米軍を撤退させる為に広範囲で頻繁なテロを米軍基地に行えば、場合によっては効果があるかもしれないが、民主党や自民党や霞ヶ関や経団連に対していくらテロを行ってもあんまり意味はない、ということだろう。
とすると、やっぱり、かつての共産党の武装闘争路線や赤軍や大地の牙などは、土台間違っていたのかもしれない。
案外と、攻撃目標を対外的な独立に絞っていれば、もうちょっと効果があったのかもなぁ。
あと、テロリズムは、デモクラシーに対する脅威というより、リベラリズムへの脅威だという指摘も、そのとおりと思った。
テロの定義もあいまいにならざるを得ない以上、テロへの対処も際限ない権限発動になりかねず、社会の自由を逼塞させてしまう危険が大きいのだろう。
結局のところ、国内問題の改善や解決にとって、テロとは百害あって一利なし、という場合がほとんどで、それ以外の方法を探る方が良いというのが、もろもろのテロの歴史を辿った時の結論に達しそうである。
おそらく、二十一世紀というのは、陰鬱なテロとの戦いをずっと続けていかなくてはならないのだろう。
一方でテロ組織を徹底して鎮圧することも必要ではあろうけれど、テロが国内問題の解決には特に意味がないということをよく理解させると同時に、テロによらない民主的な解決の方法を整備していくことが各国にとって喫緊の課題になるのだろうと思う。
とはいえ、スリランカのように、民主的な秩序の国で、再三テロリストに譲歩しようとしたにもかかわらず、諸外国がテロリストを支援した為に内戦が長期に渡って長引いた場合もある。
国際社会が反テロで一致することと、なるべく国内の格差などの問題を先手を打って民主的に解決していくことが、おそらく唯一の効果のある対策なのかもしれない。
また、宗教的狂信をさまざまな方法で和らげ弱めることも大事なんだろなあとは思う。
まったく、厄介な世紀になったものだなあと思う。