井上ひさし 「組曲虐殺」

組曲虐殺

組曲虐殺


本作品は、小林多喜二が主人公の戯曲であり、井上ひさしが最後に執筆した戯曲である。

読んで、本当に感動した。
すばらしい名作と思う。

「独房からのラヴソング」のなんと美しいことだろう。

そして、「あとに続くものを 信じて走れ」の歌のところには、本当に胸を打たれた。

「絶望するには、いい人が多すぎる。
希望を持つには、悪いやつが多すぎる。
なにか綱のようなものを担いで、絶望から希望へ橋渡しをする人がいないものだろうか。
いや、いないことはない。」

「命あらばまた他日。
元気で行こう。
絶望するな。」

などなどの、小林多喜二のことばの数々に、目頭が熱くなった。

「たがいの生命を大事にしない思想など、思想と呼ぶに価いしません。」

という台詞も、小林多喜二の、そして井上ひさしさんの思想をよくあらわしているようで、本当に心にのこることばだった。

文章は体ぜんたいでぶつかって書くべきで、
そうすると、「かけがえのない光景」を映し出す胸の映写機が動き始める、
という話も、本当に美しく、深い印象を与える話だった。

多喜二を支える家族や女性たちや、尾行する刑事たちも、とても生き生きと描かれていて、面白かった。

多くの人に読んで欲しい、すばらしい作品と思う。