- 作者: 岩井喜代仁
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/07/14
- メディア: 単行本
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著者は、ダルクという薬物依存症の人々を更生させる施設の所長をされている方。
著者自身、壮絶な体験の持ち主で、この本でも率直に書かれているけれど、不良・ヤクザから薬物依存症になって、どん底まで落ちてから、ダルクにひょんなきっかけで出会って、自分自身も助けられて、他の人も助ける立場になったことが、とても読みやすくわかりやすい文章で語られていた。
薬物というのは、本当にやっかいな、おそろしいものだと読んでてあらためて思った。
命は自分ひとりのものじゃない、ということは、読んでいてあらためてなるほどと思う。
また、薬物から逃れるためには、三人以上なんでも話せる友人を持っておくことと、拒否し断り逃げる勇気を持つこと、というのは、なるほどと思った。
あと、万一使ってしまったら、すぐにダルクなどの更生施設に行くべきだというのは、本当にそのとおりだろう。
家族機能の回復や、仲間の大切さというのも、読んでてなるほどと思った。
著者は、一時期はヤクザにまでなったとしても、根っこの部分では、「自分の思いを曲げるな、貫け」「何をやって生きてもいい、いっぱしの人間になるならば」と教え愛してくれる父親がいたそうである。
そうしたことも根底の部分には大きかったのだろうなあと思った。
神父さんの言葉の、
「岩井さん、大丈夫、人間は生まれ変われます。どんな人でも生まれ変わることができるんです。」
「昨日までのことはいいんです。生まれ変わればいいんです。」
というセリフには、なんだかぐっと来た。
誰であれ今の世の中、自分の子どもや家族や身近な人に、きちんと薬物についてどう身を守るかも教えなくてはならないし、自分の家でのそれらの管理もきちんとしておくべきだろうし、地域にもなにがしかそうしたことを言ったりしなければならない時もあるかもしれない。
今後、日本の十代の子どもの二人に一人が、人生の身近に薬物について見聞きし、四人に一人が誘われるだろう、という推定もあるとのことである。
ふとした機縁で、この本を読んだけれど、読むことができてよかった。
にしても、いっぺん始めると、なかなかやめられないのだろう。
「今日一日やめられた」という一日一日をつくっていくしかない、という一文を読んで、なるほどなぁ〜っと思った。
しっかし、それは、薬物に限らず、万事にいえることなのかもしれない。
なんというか、薬物依存症についての本ではあるけれど、それにとどまらない、いろいろ人生について考えさせてくれる本だった。