- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2010/07/14
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先日、テレビであっていたので見たのだけれど、うーん…。
期待して見たのだけれど、ちょっと残念だった。
テルモピュレーの戦い、およびギリシャ・ペルシア戦争全体は、ヘロドトスの歴史に描かれているのだけれど、この映画よりもヘロドトスの本そのものの方がずっと面白い。
この映画だけだと、テルモピュレーの戦いがペルシア戦争全体でどのような意味があったのかよくわからないし、ここでレオニダスたちが踏ん張って時間を稼いだからこそ、アテネが海上に退避でき、サラミスの海戦で劇的な勝利をおさめることができたということが、ぜんぜん描かれてない。
また、ヘロドトスの歴史ではけっこうペルシア側もかっこよく描かれていて、公平な視点から描かれているのだけれど、この映画のペルシアはなんだか不気味で、SFの他の惑星の異星人みたいな変な描き方である。
だいたい、ペルシア人は今のイラン人を見ればわかるけれど、わりと白人っぽい色や顔立ちだが、なぜかこの映画のペルシア人たちはアラブ人やアフリカの黒人ぽい。
しかも、クセルクセスは丸坊主で髭もなく、鼻輪や顔ピアスをしてじゃらじゃら身につけているが、ペルシアの考古学資料から考えれば、そのような容貌はまず考えられない。
ヘロドトスが描くように、おそらくは端正な美男子だったと考えた方が良いのではないか。
また、ペルシアのアタナトイ(不死部隊)も、この映画だと猿の惑星の猿みたいな描かれ方だが、ヘロドトスに即して考えれば、おそらくはもっと端正な美丈夫が選抜された堂々たる部隊だったと考えるべきだろう。
また、この映画には、スパルタからペルシアに亡命し、レオニダスのライバルであり、本国に対して愛憎こもごもの気持ちを抱く微妙な人物であるデマラトスが全く登場せず、ヘロドトスの歴史のもっとも興味深い人物が全く登場しないという致命的な欠落がある。
デマラトスが登場すれば、もっと映画に深みも出せたのではないか。
要するに、なんだか北斗の拳やスターウォーズを古代ギリシャを舞台にやっているような感じで、ちっとも歴史モノとしての深みや人間ドラマを感じさせないところが、この映画の残念なところだった。
だが、レオニダスたちスパルタの300人の英雄的な戦いと、その悲壮さは、いくばくかは描けていたとは思う。
後世のギリシャ人や、欧米の人々が、いまもってレオニダスと300人のスパルタ兵たちを語りついでいるのに比べて、我々は、硫黄島や拉孟のことを、どれだけ語りつぐことができているのだろうか。
そんなことは、あらためて考えさせられた。