岡田克也 「政権交代」

政権交代 この国を変える

政権交代 この国を変える


岡田さんは、まじめな政治家だと思う。
本を読んでて、好感が持てた。

よく、今の政治家は私利私欲ばかりで、駄目なのばかりという批判や失望を聞くし、実際そうした政治家も多いのだろうけれど、自民党にも民主党にも共産党にも、探せばけっこうまじめな政治家もいるように思う。

まずは、そうした政治家のメッセージに耳を傾けてみるのも大切な作業だと思う。

もちろん、その個々の意見や政策への不同意や批判はあるかもしれないが、それもまずはとりあえず、いったん耳を傾けてからにすべきだろう。

というわけで、今の政治家に失望している人たちや、政権交代民主党に対して懐疑的な人にも、とりあえずこの本を読んでみることをオススメしたい。

この十五年間の政治の動きを、岡田さんの目から回想した部分もあって、なかなか面白かった。
細川政権以来、本当に日本の政治は混迷してきたし、野党も複雑な合従連衡を繰り返してきて、当時の動きは今もってよくわからない部分があるけれど、岡田さんのこの本を読んでいると、「ああ、そういえばそうだった」とか「ああ、そうだったのかー」みたいなのがあって、けっこう面白かった。

愚直に、一貫して政権交代可能な政党をつくろうと目指し続けてきた岡田さんの姿勢は、節操なく自民党に舞い戻った政治家たちよりは、はるかに節操があって好感の持てるものだとあらためて読んでて感じた。

また、この本の中で、官僚だった経験から指摘している、自民党と官僚と業界が癒着した構造の問題は、本当にそのとおりと思う。
道路・医療・温暖化対策・情報公開は、政官業の癒着構造ではどうしても前に進まないだろうし、政権交代が行われるだけで、それらの分野は劇的に変わるだろう。

政治の目標としては、同書の中では、自由と社会的公正、を掲げてある。
その社会的公正の具体的内容として四つ、
中間所得者層の厚み、実質的な機会の平等、セーフティネット、世代間の公平、
という事柄をあげている。

中間所得者層の破壊が小泉政治の特徴だった。
しかし、多くの国民は、中間所得者層に属しているわけで、格差社会があまりにも拡大することに、危惧の念を抱いている国民も多いと思う。

中間所得者層の破壊を進める自民党政治を支持し続けるのか、あるいは別の選択肢を選ぶのか。
これから、大きな岐路になるだろう。

感心したのは、岡田さんが有権者の良識や意識の高さをとても信じていることだった。
選挙区で数え切れないほど市民との対話を繰り返してきたそうで、そうした体験に基づいて、日本の民主主義の成熟と意識の高さを確信しているという。
たいしたものだと思う。

岡田さんや民主党を支持するしないにかかわらず、一読してみる価値はある本と思われる。