田中克彦 「エスペラント 異端の言語」

エスペラント―異端の言語 (岩波新書)

エスペラント―異端の言語 (岩波新書)


エスペラント語について、いろんな言語学者の意見や、日本における歴史などがわかりやすく書いてあった。

「言語は運命ではなく意志によって選択される」

ということや、

エスペラント語はヨーロッパ語の宝石箱」

というのは、なるほど〜っと思った。

また、山田耕筰やマックス・ミュラーエスペランティストだったというのにはかなり驚いた。
大杉栄北一輝柳田國男新渡戸稲造エロシェンコ魯迅宮沢賢治、といった人々がエスペラントを学び推進していた、といううのはわりと今日よく知られているみたいだけれど、なかなか興味深い近代史の一つの視角と思う。
ロマン・ロランエスペラント語を推奨していたそうだ。

homorismoやsennacioという発想も、なかなか興味深かった。

言語は単に外的なコミュニケーションにとどまらず、内面の解放につながること、

狭いその言語やその社会のくびきから解放する、そうした内的な、魂の解放につながる、ということに言及されていることも、共感させられた。

なかなか面白い一冊だった。
エスペラントへのとっかかりには、いい本なのかもしれない。

ただ、この本で最後に指摘されているように、実際に魅力的に使っている人や使われている現場を見て、何かイメージを持つことが、語学の学習には最も大事なことかもしれない。
その点、この本には書かれてないけれど、今日、インターネットでさまざまなエスペラントのミュージシャンの歌を、youtubeなどで気軽に見ることができるのは、そうしたイメージの形成にとても重要な役割を果たすように思われる。

「異端」であり、スリリングで魅力的な言語「エスペラント」への魅力ある誘いの一冊なのではなかろうか。