- 作者: 田中克彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/20
- メディア: 新書
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エスペラント語について、いろんな言語学者の意見や、日本における歴史などがわかりやすく書いてあった。
「言語は運命ではなく意志によって選択される」
ということや、
「エスペラント語はヨーロッパ語の宝石箱」
というのは、なるほど〜っと思った。
また、山田耕筰やマックス・ミュラーがエスペランティストだったというのにはかなり驚いた。
大杉栄や北一輝、柳田國男や新渡戸稲造、エロシェンコや魯迅、宮沢賢治、といった人々がエスペラントを学び推進していた、といううのはわりと今日よく知られているみたいだけれど、なかなか興味深い近代史の一つの視角と思う。
ロマン・ロランもエスペラント語を推奨していたそうだ。
homorismoやsennacioという発想も、なかなか興味深かった。
言語は単に外的なコミュニケーションにとどまらず、内面の解放につながること、
狭いその言語やその社会のくびきから解放する、そうした内的な、魂の解放につながる、ということに言及されていることも、共感させられた。
なかなか面白い一冊だった。
エスペラントへのとっかかりには、いい本なのかもしれない。
ただ、この本で最後に指摘されているように、実際に魅力的に使っている人や使われている現場を見て、何かイメージを持つことが、語学の学習には最も大事なことかもしれない。
その点、この本には書かれてないけれど、今日、インターネットでさまざまなエスペラントのミュージシャンの歌を、youtubeなどで気軽に見ることができるのは、そうしたイメージの形成にとても重要な役割を果たすように思われる。
「異端」であり、スリリングで魅力的な言語「エスペラント」への魅力ある誘いの一冊なのではなかろうか。