- 作者: 秋山清,秋山清著作集編集委員会
- 出版社/メーカー: ぱる出版
- 発売日: 2006/04/01
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増補日本の反逆思想―無政府主義運動小史 (三一新書 868)
- 作者: 秋山清
- 出版社/メーカー: 三一書房
- 発売日: 1977/12
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幸徳秋水、大杉栄、そしてそれ以後の日本のアナーキストやアナキズムについてわかりやすく解説してあり、とても面白かった。
著者が言うには、アナキズムは平和的愛の思想であり、決してテロや暴力の恐怖の思想ではないと指摘する。
幸徳秋水の「直接行動」というのも決してテロや暴力を指す言葉ではなく(それは当時の官憲にも大きく誤解され歪められて報道されたことだが)、
アナキズムとは、相互扶助・共同生活の社会の実現を目指し、そのために、思想・知識等を養成し、能力を訓練し、労働組合をつくる、労働運動と思想の啓蒙だということを、幸徳らの言葉をきちんと引用して指摘する。
大杉栄のアナキズムも、労働運動と非軍備主義であったこと、反共産主義であったことを、わかりやすく解説してあった。
あと、大杉のその後の、日本のアナキズムの堕落や退廃への批判も面白かった。
昭和初期のアナキズムが、労働組合運動を軽視して、その結果として現実から遊離し退廃し、衰退していったことへの指摘も、なるほどと思った。
日本のアナキズムについて知るには、良い一冊だと思った。
仮に、現代社会において、アナキズムがもはや過去の思想であり、また空想や夢のようなものだとしても、過去の時代にそのために身命を賭した人の輝きというものは、今の時代にも何かしら照らしたり啓発することのあるものだと思う。
また、何が非現実的で何が現実的かは、いろいろ検討を要することだろう。