石川三四郎の生涯と思想〈完結編〉帝力、我に何かあらんや (1976年)
- 作者: 北沢文武
- 出版社/メーカー: 鳩の森書房
- 発売日: 1976
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「学問と愛、そして反逆」「愚かな彼、愚かな道」に続く、三部作の完結篇で、ヨーロッパ放浪と帰国、戦中・戦後の石川三四郎の軌跡がわかりやすく書いてあって、とても面白かった。
石川三四郎が、あくまで暴力革命を否定し、革命も阿片だと言ってのけ、非暴力・不服従を貫いて、アナキスト仲間からも随分批判され、かつ満州事変を鋭く批判したために相次ぐ発禁にあったところなど、あらためて感嘆。
非戦・非暴力不服従を貫き、体制にも、過激派にも、どちらにも阿らないというのは、なかなかできないことのように思える。
大沢正道が石川三四郎を評して、
「石川三四郎の八十年の生涯をつらぬくものは、あらゆる権力的なもの官僚的なものに対するゆずることのない抵抗と、主義主張にこだわらない人間的な寛容―この二つであった。」
と言ったそうだったけれど、本当にそうだったのだろう。
「私はいつも永遠を思うが故に、時間を限った成業を願わない。」
と言い切り、誰が読むというわけでもなく、時代にも体制にも入れられなくても、黙々と学問と文筆に励んだ姿勢は、本当に尊いものを感じる。
「思想は耕作、同志を百年ののちに求める」
ということも言っていたそうだ。
非暴力不服従のアナキズムというものを身を以って示し、「即身説法」を説き続けた石川三四郎の言葉や生き方には、今なお現代日本人が襟を正して学ぶべきことがいっぱいあるような気がする。
「一切の解決は結局その人の誠実さいかんということに懸かっているのだから、その覚悟さえ決れば、何も悩むことはない」
(74頁)