①当面はプライマリーバランスを重視し、借金と共生しつつ
財政赤字については超長期で収支を考える。
②そのために、無駄を削る、公務員制度を改革する
等の努力は必要。
③財政赤字の解消を急ぐあまりかえって財政再建が遠のく
という愚・矛盾はさけるべし。
④新自由主義⇔反新自由主義という二項対立ではなく、
新たな社会保障や社会の仕組みが必要。
⑤産業構造の転換は必要だが、痛みとリスクを
個人に押し付けるのではなく、社会で分担する。
⑥またそのための十分な説得説明が必要。
⑦リスクの社会化としての相続税や累進課税
という分担的増税がいいのではないか。
⑧社会保障・産業構造等が時代に応じたものになれば、
グローバルな点でも日本経済は回復し、
税収増・社会保障の充実につながるのでは。
⑨消費税を増税するなら、条件が整ってからであり、
地方の自主財源とするほうが合理的である。
Q:
現在の日本の状況で、財源確保や財政再建をするには、
どのような方策が、
ベスト、ないしはセカンドベストなのでしょうか。
あるいは、財政再建をすべしという考えをカッコにくくるなら、
どのようなタイミングで財政を再建し、
今は、なにをするべきなのでしょうか。
A:私自身の考えを言えば、
まず、国債について言えば、
財政赤字はもちろん大変な問題で、きちんと取り組むべき問題ですが、いきなり財政再建のために増税という方策をとるのではなく、まずはプライマリー・バランスを黒字にして(小泉政権時代に竹中平蔵さんがプライマリー・バランス重視の政策をしていましたよね)、とてつもなく長い目で収支を考えることと、18世紀のイギリスがそうしたように、借金をなくすことより借金とうまく共生する道を選んでいくしかないと思うんです。
日本の国債の場合、よく言われることですが、幸いなことに国債の保有者はほとんど国内の企業や個人です。
また、国の経済規模が幸いに日本はかなり大きいので、今すぐ国債で国がつぶれるというわけではありません。
かといって、国債をこれ以上むやみに増やすことも避けるべきですが、まずはプライマリー・バランスと長い目で見た国債との付き合いを考えるしかないと思います。
プライマリー・バランスを黒字にするためには、それこそもっと必死で行政の無駄を省いたり公務員制度改革をすべきと思います。
今の財政赤字全体をなくすなんてことを言いだしても、急には絶対無理ですし、他の諸条件を無視して増税をしても、かえって景気が悪化して税収が減ってますます財政再建が遠のくのみと思います。
次に、新自由主義か反新自由主義かという不毛な二項対立をやめて、産業構造の転換を積極的に推し進めながら、夫婦が両方とも非正規職員の共働きでも安心して出産育児ができるような社会保障や仕組みを整えることだと思います。
産業構造の転換を進めるためには、一時的には農業など低生産性部門にはかなりの痛みが生じるのはやむをえないと思います。
小泉さんが言ったような「痛みを伴う改革」をはっきり産業構造の転換として国民に説得し、かつ小泉さんとは異なってリスクを個人に押し付けるのではなく、社会でリスクを分担する「リスクの社会化」をはっきり打ち出して、国民に負担ではなくて分担という意識を税その他について説得説明することが必要と思います。
消費税増税には、私は景気が低迷すると思うので現在は反対なのですが、相続税や累進課税などは、リスクの社会化という見地から、負担ではなく分担として広く社会に説得して増税するしかないと思っています。
社会保障が充実して国民が安心できるようになれば、むやみな貯蓄ではなく必ず消費も活発になると思います。
また、産業構造の転換が進めば、グローバル市場の中で必ず日本経済は上向きになっていくと思います。
そうなれば、景気もやがて上昇し、税収も増えて、社会保障財源の捻出や財政再建もより可能になると思います。
ですので、いつからとは言えませんが、そうした諸条件が整えば、消費税増税は可能と思います。
しかしながら、消費税は地方自治体の財源にすべきで、中央政府が社会保障財源にしない方がいいのではないかと私は思っています。
というのは、企業は地域分布にばらつきがありますし、個人所得もやはり首都圏などが圧倒的に大きいわけで、幅広くどこでも徴収できる税といえば消費税ぐらいしかないんですよね。
ですので、地域自治や地方分権を進めるのであれば、消費税は地方の自主財源としていくべきで、各地方がその地方の福祉のために使えばいいことで、中央政府の財源には、たとえ社会保障目的税などという名目であっても、望ましくないし、すべきではないし、ましてや財政再建のために消費税増税というのは望ましくないのではないかと思います。
ただ、これはあくまで私の意見なので、適切な批判があればむろん個々の部分については修正をしていくべきと思います。