Nスペ ウェイクアップコール 宇宙飛行士が見つめた地球

もう三年ほど前になるが、Nスペで、「ウェイクアップコール 宇宙飛行士が見つめた地球」という番組があっていた。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/080204.html

(以下はその時の感想)


ふしぎな、心に響く、良い番組だった。

ウェイクアップコール、というのは、宇宙飛行士の朝のめざめのために流される音楽で、いろんな曲がリクエストされて、今までに千曲以上流れたそうだ。

宇宙空間から、音楽を聴きながら、見つめる地球。

その地球の、なんと美しいことだろう。

番組で、特に感動的で、印象的だったのは、コロンビア号の乗組員だったイスラエル人の宇宙飛行士イラン・ラモーンさんのエピソードだった。

ラモーンさんは、宇宙に行く前は、イスラエルの空軍のパイロットとして赫々たる武勲を挙げた人だったそうで、とても愛国心民族意識が強く、ユダヤ教にも深い関心と信仰があり、宇宙飛行の直前にはホロコーストの記念館に足を運んだそうで、自分がユダヤ人だということを強く意識していたそうだ。

だが、宇宙に行って、大きく変わったようだった。
宇宙を実感していたこと。
地球が本当にかけがえがなく、一つの地球を守り慈しむべきだと感じていたこと。
国境線のない、ひとつの人類や世界が、そこにあると思うようになったこと。
そんな様子がうかがえるエピソードが、番組では紹介されていた。

コロンビア号が事故を起こさず、無事にラモーンさんが生きて帰還できていたら、もっとはっきりとそういうメッセージを世界やイスラエルに伝えられたのかもしれない。
残念ながら、コロンビア号の宇宙飛行士は、あと十五分で地上に帰還できるという時に起きた事故で皆亡くなってしまった。

しかし、亡くなる前に、彼らがのこしたメッセージや、宇宙で感じたことは、本当に貴重な、のこされた地球の人々がきちんと汲み取るべきものなのかもしれない。
事故後、奇跡的に燃え残った日記が、二ヶ月雨ざらしにされていたのを、半年間かけてイスラエルの警察が修復して解読したというエピソードも、なんだかじーんときた。

番組では、9.11事件も、アフガンの空爆も、宇宙から見たという宇宙飛行士の話も紹介されていた。
そのアメリカ人の宇宙飛行士は、同時に、アマゾンの稲妻や、オーロラや、地球の大気の美しさについても、語っていた。

宇宙から見たら、地上に住んでいるだけの狭い視野とはもっと違う実感や視点が持てるのかもしれない。

本当は、国境線のない、ひとつの人類、ひとつの世界があるだけなのだろう。
だというのに、狭い民族意識や国境線の内側の意識に閉じこもって、相争うのは、本当に哀しい、愚かなことなのかもしれない。

国境線のない、ひとつの地球を、守り慈しむ意識や心を、コロンビア号の尊い犠牲やその他の人々のご苦労を思う時、大事に忘れずに、地球にいる私たちも受け取って育んでいきたいと思った。



(その後、この三年を振り返っても、必ずしも人類は「宇宙からのまなざし」を持つことはできず、むしろ程遠くて、わずかなことや小さな土地を争っては角突き合わせるばかり。「宇宙からのまなざし」をできるだけ心がけてみるだけで、多少は人類も変わるのかもしれないし、そうしなければ何事も解決しない時代に来つつあるのかもしれないと思う。)