ETV 父とチャコとボコ〜金子光晴・家族の戦中詩〜

もう三年近く前、ETV特集で詩人の金子光春について「父とチャコとボコ〜金子光晴・家族の戦中詩〜」という特集があっていた。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2008/0120.html

(以下は、その番組を見た時の感想)



おもしろかった。

だいぶ前、何冊か金子光晴のエッセイや詩集は読んだことがあったけれど、その時もすごく面白かった。
番組を見て、また読みたいと思った。
以前読んだときも思ったけれど、本当新鮮だし、何か、本当のものがある。
日本の詩人ではめずらしいと思う。

あの時代に、みんなと違う方向に、それが逃げと言われようが卑怯と言われようが、自分や自分の家族の生き様を大勢に逆らって貫くのは、今日からでは想像もつかない、空気の重圧にさからう度胸が必要だったろう。
論理的にいえば、すべての人が金子光晴みたいになれば、いかなる戦争も不成立ということになる。

いつの時代にもいる「生真面目」な人々は、金子光晴のことを、臆病者だとか不甲斐ないと言うかもしれない。
けれども、あの時代に、時代の空気にさからえなかった人と、稀有にもさからった人と、どちらが本当に臆病なのか、どちらが本当に不甲斐ないのか、そこのところは、一概には決められない気もする。

ドロップアウトサボタージュというのは、案外覚悟や度胸が要るものだろう。

右のイデオロギーにも左のイデオロギーにも染まらず、熱に浮かされて狂気に走るよりも、自分や自分の家族の暮らしやいのちを守ることにのみ命を賭けるというのは、案外本当の正気と勇気がいることかもしれない。

金子光晴みたいな人が大勢いたら、案外いろんなことの予防になるのではないかと思うが、なかなか、戦後の日本は必ずしも金子光晴みたいな人が大勢になったというわけでもなさそうだ。
「生真面目」なナショナリスティックな若者が増えていることを思うと、もうちょっと金子光晴みたいな人が増えて欲しいなあとも思う。