法然上人 「御遺跡の事につき法蓮房に示されける御詞」


「御遺跡の事につき法蓮房に示されける御詞」

信空上人云、古來の先徳皆遺跡あり、而に今一宇建立の精舍なし、御入滅の後何の所をもてか御遺跡とすべきと。上人答て、遺跡は一廟をとれば遺法周ねからず、予が遺跡は諸州にあるべし。其故は念佛三昧の興行は愚老一期の勸化也、賤男賤女の柴の戸細、海人漁人の葦の苫屋に至るまで、念佛を修せん砌は、皆是我遺跡なるべしとぞ仰られける。