アドラー 「天使とわれら」

天使とわれら (講談社学術文庫)

天使とわれら (講談社学術文庫)

肉体や物質を持たない、精神的存在である天使。

中世や近世の哲学において、この天使の存在がなければ、存在の連鎖の階梯的秩序の連なりが完成しないので、天使がいるということが論理的に考察されたことが触れてあって、なかなか説得力があって面白かった。

ちなみに、アクィナスはもちろんとして、ベーコンやロックも天使の存在について肯定的に論じていることが引用されている。

また、「天使主義的誤謬」(Angelistic fallacy)という概念を著者が指摘しているのは面白かった。
つまり、人間を、天使のように肉体を持たない純粋に精神的な存在だと勘違いする誤謬のことであり、この観点から、アナキズムやある種のマルクス主義を批判しているのは興味深かった。

西洋の神学や哲学の歴史を踏まえた、真剣な天使論と、天使論から現代について言えることを述べている、興味深い一冊だった。