とても面白かった。
新撰組の生き残りの永倉新八が、大正になり、七十代半ばになってから、残した回想録である。
新撰組モノの小説と若干異なる印象を受けるところがいろいろあって面白かった。
たとえば、永倉をはじめとした新撰組の隊士の多くは、どうも尊王攘夷のつもりでそもそも新撰組に参加し、ずっとそのつもりでいたようであることである。
それほど幕府に殉じるというつもりがはじめからあったわけでもなかったようである。
そうしたら、いつの間にか、そのつど目の前に任務に一生懸命誠実に取り組んでいるうちに、完全に幕府側ということになり、会津と一体化していって、時勢の変化の中で賊軍ということになってしまったようである。
永倉自身よくわからないまま、漠然とした考えで、なんだかよくわからないが新撰組のために命を張るというつもりで尽しているうちに、ああいう時の流れになったようである。
また、永倉のこの回想録を読んでいてとても興味深かったのは、芹沢鴨のことを高く評価してとても惜しんでいたことである。
だいたい世の新撰組モノの小説では、芹沢は近藤に倒されるなんだか脇役めいた扱いなのだけれど、永倉によれば欠点も含めてなかなか興味深い人物だったようである。
真木和泉や平野國臣についても、新撰組からすれば敵であるのに、その立派な態度に感心しその死を惜しんでいるあたりに、永倉や新撰組隊士たちの懐の広さや純情さを感じた。
ラストの方では、雲井龍雄も登場し、とても興味深かった。
それにしても、結局、大正頃まで生き残った新撰組隊士は、永倉新八と斎藤一と尾形俊太郎ぐらいだったのだろうか。
永倉のみまとまった回想を残してくれた点で、本当に貴重な一冊と思う。
生き死にの不思議さを思うのと同時に、永倉の場合最後まで生きることができる限りは生き残ろうとし闘い続けた、その姿勢や意志が、やっぱり長寿の秘訣だったのかもなぁと思われた。
- 作者: 永倉新八
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2009/05/01
- メディア: 文庫
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