- 作者: デボラエリス,Deborah Ellis,もりうちすみこ
- 出版社/メーカー: さえら書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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今から十年前に書かれた本で、当時、十代やそれ以下の二十人の、イスラエル人とパレスチナ人の子供たちへのインタビューを集めた本。
どの子も非常にしっかりと、自分の置かれている状況や思いや夢などを、それぞれに語っている。
中には、大人たちの価値観や憎悪に染まってしまっている子どももいる一方で、大人よりもはるかに大人びたことを言っている子どももいた。
この本を読んでいて、どのイスラエルの子どもたちも、自爆テロにおびえ、誰か身の周りの人が実際に自爆テロで死んでいる心の傷を抱えていることと、
パレスチナの人々が、検問所や外出禁止令で日々に不自由や不愉快な目に遭い、イスラエル兵士の横暴に忍耐を強いられていることの、
その両方に、あらためて胸が痛んだ。
イスラエルの子どもの中には、はっきりとイスラエルの入植政策を批判し、イスラエル兵士の横暴を止めるべきだと考え、双方が何かをあきらめて妥協すべきだと考えている子どもが複数いるので、こうした思慮ある子どもたちがそのまま良く育ってほしいと思った。
また、パレスチナの子どもたちには、このような不自由や不条理が、早く少しでも少しずつでも改善されていくことが願われてならなかった。
子ども向けの本だけれど、多くの人に読んで欲しい一冊。
これを読むと、なんとしても、中東和平は実現しなければならないとあらためて思った。
それにしても、第二次インティファーダの前には、ユダヤとパレスチナの人はごく普通に一緒に平和に行き来したり、一緒に学んだりすることもあったそうである。
なぜこんなことになってしまったのか。
分離壁は、ただ単に物質的なものでなく、人々の心の中につくられてしまっているものなのだとこの本を読んであらためて思った。
なんとか、人々を隔てる心の中の壁がいつか取り去られ、和解できる日が来るといいのだけれど。
お互いに敵意を持たず、ある程度は相手を信頼していくということが、なんとこの地では難しいことかということと、しかしこの二つをなんとか一人一人が実現していくしか道がないと、読んでいて思った。
多くの人に読んで欲しいすばらしい一冊だった。