「レ・ミゼラブル 少女コゼット」 世界名作劇場 アニメ

レ・ミゼラブル 少女コゼット 1 [DVD]

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世界名作劇場の『レミゼラブル 少女コゼット』は本当に素晴らしい作品だった。
誰かが「神アニメ」と言っていたけれど、その名にたがわぬ名作だと思う。


はじめは、いわゆる萌え系の絵柄であることに、往年の世界名作ファンにはちょっと抵抗があったのだけれど、見始めたら圧倒的なストーリーの面白さに、毎回全く退屈せず、どんどん引き込まれていった。
慣れれば、この絵柄もけっこうかわいくて良い。
そして、この大作を見事にアニメ化していた製作者の力量もたいしたものだと思う。


「人間は変わることができる。人類も。」
という作品を通底するメッセージは、本当に胸を打たれた。


ジャン・バルジャンが荷車を持ち上げるシーンは、オープニングの歌の時にも映るけれど、本当に胸を打たれるシーンで、男はああなくてはならないと本当に思う。


どの話も良かったけれど、第四十九話の「私のお母さん」の回では不覚にも涙を禁じ得なかった。


最初の方の話で、幼いコゼットがテナルディエたちにこき使われて、ろくに食事も与えられない中で、そっとコゼットに食事を差し入れるガヴローシュの姿は、原作とはちょっと異なるようだけれど、とても胸が打たれるものがあった。
犬のシュシュとコゼットとガヴローシュが、束の間楽しく遊ぶシーンと、そのことをなつかしく思い出すシーンも本当に美しかった。


大人になったガヴローシュが、テナルディエの脱獄を助けた後、テナルディエと次のようなやりとりをするシーンも胸打たれた。


「俺はあんた達の仲間にはならない。」
「なんだと、だったら、なぜおれを助けた?」
「こんなひどい親だって、俺の親だからな。
こんな世の中だけど、俺は生まれてきてよかったと思ってる。
それだけはあんたにも、感謝しなくちゃな。」
「それだけかよ?」
「それだけで十分だろ、それじゃな。」


あんなにひどいテナルディエに対しても、このように言うガヴローシュは、本当に悟りに近いと思う。


また、心に残ったのは、「ABCの友」の会のメンバーたち。
第四十四話で、ジャン・バルジャンが、ABCの友のリーダーのアンジョルラスに言う以下のセリフは心に残った。


「しかし、君たちのしたことは無駄ではない。
君たちがこのバリケードでともした灯りは、今日立ち上がらなかった人々の心にも小さな火種を残すだろう。いつかその小さなあかりが寄り集まり大きく赤々と燃え上がるとき、再び革命が起こり、そのときこそ国は変るんだ。
人類の歴史というのは、おそらくこうやってともされるたくさんの灯りによって、ゆっくり進んでいくものだ。暗い過去を抜け出し、明るい未来へと。」


第四十七話の、コゼットのセリフも胸打たれた。


「私のお母さんも死んでしまって、会えなくなって寂しかったけど、時々話しをするの。嬉しいことや悲しいことや、あなたのことも。会えないからって、すべてが消えておしまいになったわけじゃない。私がいればおしまいにはならないの。」


そして、ラストの第五十二話の、ジャン・バルジャンのセリフ。


「人は誰も平等に、たった一つの命をもらってこの世に生まれてくる。
しかし、生まれた後の人生は決して平等とはいえない。
自由を奪われ、貧しさや飢えに苦しむ人びとが多くいて、その人達の命は悲しいほど軽く扱われている。
けれど、そんな世の中を変える方法はとても簡単なことだ。
一人一人がまず自分自身を大切にして、他の人のことも、自分と同じように大切にする。
それができれば、いつかきっと、誰もが力いっぱい自分らしく生きられる世界になる。人は変わることができる。人類も同じだ。」


「私がミリエル司教様から受け取った、闇を照らすあかりを、今度は君たちが受け継いでいって欲しい。そして、君たちの子供たちや、またその子供たちに・・・。私はそんなに遠くにいくわけじゃない。いつも君たちを見守っている。」


多くの名台詞があったけれど、セリフ以上に、ストーリーと登場人物たちの心根が本当に素晴らしかったと思う。
過酷な運命にかかわらず、しっかりと、善意をもって生きていくコゼットやジャン・バルジャンやガヴローシュたちは、永遠に自分の手本にしたいと思う。
ミリエル司教も。


原作やドラマと異なり、ジャヴェールが最後は変わっていくところも、とても良かったと思う。


そういえば、もうずいぶん昔、パリのヴィクトル・ユゴーが住んでいた家に行ったことがある。
東洋の陶器が置いてあったかすかな記憶がある。
あの部屋から、レミゼラブルの物語も紡ぎだされたのだろう。
またいつか、今度はきちんと原作やその他の作品を読んでから行ってみたい。


本当に、『レミゼラブル』は、フランスの、いや、人類の、数ある物語の中でも最高峰の物語と思う。
神の手が紡いだとしか思えない物語だと思うし、それを見事にアニメ化したこの作品も、神アニメと呼ばれるにふさわしいと思う。