ビジュアル絵本 米百俵の心 ~小林寅三郎の決断~ (ビジュアルふるさと風土記)
- 作者: 稲川明雄
- 出版社/メーカー: 考古堂書店
- 発売日: 2001/12/15
- メディア: 単行本
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有名な物語だが、あらためて絵本で読むと、胸を打たれた。
小林虎三郎は、幕末の長岡藩の人物で、佐久間象山の弟子で、吉田松陰のライバルだったほどの優秀な人物だった。
しかし、ペリーの黒船来航に関して藩主に意見をしたため、長い間、小さな部屋から一歩も出れない生活だった。
その間も、その部屋を「求志洞」と名付けて、ひたすら学問をして過ごした。
やがて、戊辰戦争が起こり、幕府方となった長岡藩は、戦争に敗れて焼野原となった。
その時、藩の教育を担当することになった小林虎三郎は、どんなに苦しくても教育こそが将来の国を支えることをみんなに説得し、貴重な百俵分の米を、すぐに食べてしまわず、学校づくりの資本金とした。
その結果、多くの人材が長岡から育ったそうである。
苦しい時に、目先のことを考えるのではなく、教育を大切にした小林虎三郎は本当に偉大だと思う。
この「米百俵」のエピソードは、今から十数年前、小泉さんが首相になった直後に国会の演説の中で引用し、当時は多くの人の胸を打ったものだった。
ただ、あれから十数年が経った今、振り返ってみると、本当にその後の日本は、この小林虎三郎の「米百俵」の精神を実現してきたのか、むしろ正反対のことばかりしてきたのではないかという気がする。
今は、奨学金を返済できず、苦労している学生が多い。
銀行の不良債権や原発事故を起こした電力会社には政府が公的資金を注入したり、土建には多額の公共事業を行うのに、はるかに金額が少ない学生の奨学金は、厳しく取り立てる。
また、正社員の採用を減らし、スキルの身につかない非正規雇用ばかりを増やす。
これらは、どう考えても、米百俵の精神の正反対だと思う。
本当の意味で、小林虎三郎の米百俵の精神を生かす日本になって欲しいと、あらためて思ったし、そのためにも、多くの子ども、そして大人に読んで欲しい絵本だと思った。