
- 作者: みずかみかずよ,久富正美
- 出版社/メーカー: 葦書房
- 発売日: 1980/08
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心に残る、良い絵本だった。
親戚の優しいお兄さんは、蝶を集めて標本をつくるのが好きで、主人公の女の子と一緒にとりにいき、夕顔の白い花も愛する心優しい人だった。
しかし、戦争で、少年航空隊となって出征してしまう。
やがて、女の子の家も空襲にあい、炎にまかれるが、その時に、燃えた標本から火が蝶のような形に舞い、夕顔の花びらから水のしずくをそのお兄さんが飲ませてくれたような幻を見て、奇跡的に命が助かる。
はっきりはこの絵本では書かれないが、おそらくお兄さんは帰ってこなかったのだろう。
出征の時に、夕顔の種を主人公にも渡してくれたが、おそらくお兄さんは自分でも種を持って行って、今は南の島に夕顔の白い花が日本と同じく咲いている。
そう主人公は思う。
それにしても、途中、蝶を取ろうとしているお兄さんを、軍人が見つけて非国民とののしり、網をへし折る箇所は、当時はそのようなことが多くあったのだろうけれど、なんとも胸が痛む。
蝶や花を自由に愛でることができる世の中というのは、本当にかけがえがないと、あらためて思った。