絵本 「せかいでいちばんつよい国」

せかいでいちばんつよい国

せかいでいちばんつよい国



とても面白い絵本だった。

どこよりも強い大きな国があり、他の国々をつぎつぎと力で征服していく。

そのうち、小さな国があったので、そこにも軍隊を連れて征服に行く。

その小さな国は、武力では抵抗せず、暖かく大きな国の軍隊を迎え入れる。

そして、料理のおいしさや、歌のうまさや、いろんな文化の力によって、いつの間にか大きな国の軍隊の人々の心をすっかりつかむ。

大きな国の大統領も、いつの間にか、自分の国に帰ってから子どもにその小さな国の歌を自然と歌って聞かせていることにはっとなる。

本当に一番強いものは、軍事力というハード・パワーではなく、歌や料理などの文化の力・ソフト・パワーだということを、生き生きとわかりやすく教えてくれる面白い絵本だと思う。

これはしょせんは絵本の絵空事だと言うなかれ。
実際の歴史には、いくらでもこのような事例がある。
ローマ帝国を征服したゲルマン人は、いつの間にか、ローマの文化と法律とキリスト教に逆に征服された。
鮮卑族女真族など、中国に侵入した北方の民族は、いつの間にか中国の文化に同化した。
日本においても、関東の武士などが天下をとっても、京都の朝廷は厳然と生き残り、武士は文化や権威の面でいつも朝廷に敬意を払い、心服していた。

現代においても、ソビエトや東欧は、結局ビートルズなどの西側の文化の魅力に負けたのかもしれない。

日本も、戦後は戦前と異なり軽武装の平和国家として出発したが、たしかに、日本のアニメや歌や文化は、世界中に広まり、多くの人に愛好されるようになった。
要は、このことにどれだけ自信を持ち、それ自体がひとつの力だという自覚を持って駆使するかが大事なのかもしれない。

ちょうど八月十五日頃に読んで、あらためて考えさせられる、面白い一冊だった。