山口 彊 「生かされている命 - 広島・長崎 「二重被爆者」、90歳からの証言」

生かされている命 - 広島・長崎 「二重被爆者」、90歳からの証言

生かされている命 - 広島・長崎 「二重被爆者」、90歳からの証言


すごい本だった。

著者は、広島で被爆し、言語に絶する地獄の中をかろうじ生き残り、故郷の長崎にたどり着いたところで再び被爆した、いわゆる「二重被爆」の体験者。

その体験談もすごかったが、それと同時に、この本は著者の山口さんの生い立ちや人生について書かれた、人生の書としても、とてもためになる貴重な本だと思う。

少年時代からの体験を通した戦前の日本の空気の変化やそれに対する洞察などは、とても興味深かった。

あらゆる困難や悲しみを乗り越え、黙々と自らつとめて、九十三年の人生を生き抜いた山口さんの、生きる力の強さには本当に驚嘆される。

自分の心は自分のもの。
それが「生きる力」。

そう喝破し、「ただ生きる」ことに専念し、目前の現実を認め、ただそれに対応することに集中してきたという山口さんの生き方は、とても大事なことを教えられる気がする。

「本人の意図を無視し、自由を押さえつけようとする力」と闘うことの大事さも教えられた気がする。

原爆体験ということと同時に、ひとつの自伝としても非常にすぐれた、多くの人に読まれるべき本ではないかと思う。

以前、たまたまテレビで山口さんを見て、そのまなざしが気になり、いつかそのメッセージをきちんと受けとめたいと思っていた。
この自伝を読むことができて、本当に良かったと思う。