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この前、テレビであっていたので見たのだけれど、なかなか面白かった。
思っていたよりずっと面白かった。
古代中国の戦争というのも、シビアで残酷なものだったのだろう。
墨家の言う「非攻」や「兼愛」は、どこまで過酷な戦国乱世に意味があったのか。
いかに理念は高くても、実際に不条理な戦争と戦えば、自分自身も過酷な戦争に手を染めなくてはならない。
主人公の革離の指揮によって梁は一時的に趙の大軍を撃退するけれど、危機がいったん去ったと見るや、革離らを殺そうとする梁の王たちの姑息さやずるさを見ていると、何のために戦ったのやらという気もしてくる。
マキャヴェリ的に言えば、革離は民衆の支持を得ている時点で、速やかに王を倒すクーデターを起こして、王子を後継にするか、自ら王になるべきだったろうけれど、それができないのが墨家の思想というものだったのだろう。
しかし、古代中国の時代において、単に王侯らの私利私欲の闘争の下僕になるのでもなく、ニヒリスティックに達観してそれらに無抵抗になるのではなく、「非攻」と「兼愛」を掲げて実際に王侯らに痛撃を与えるほどに戦った墨家や墨家に率いられた庶民の姿があったというのは、歴史のひとつの偉観だったとは言えるのかもしれない。
個人的には、儒家や道家よりはよほど墨家にロマンを感じる。
とはいえ、墨家の難しさや限界のようなものもいろいろ考えさせられる映画だった。
ロマンとしては素晴らしいが、現実はかくも厳しいということだろうか。
もうちょっと救いのある結末やストーリーだったらともちょっと思うけれど、たぶんこうした悲劇はざらにあの時代にあったのかもしれない。
なかなか製作費をかけてつくってそうな、面白い映画だった。
墨家が主人公の映画なんて、たぶん長い間東アジアでは考えられなかったろうから、その点では二十一世紀までなって、やっと少しは墨家の存在がここまでポピュラーになってきたということなのだろうか。
今後も、いろんなサブカルチャーで、墨家が取り上げられて欲しいものである。