- 作者: 小林よしのり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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いわゆる「A級戦犯」について、漫画や文章でまとめたもの。
意外なことに、東条英機や広田弘毅についての見方は、私はほぼ小林よしのりと一致した。
そんなにいい加減なことを扇動的に書いた本では決してないと思う。
かなり、いろんな資料を読んで描かれた、面白いものだったと思った。
ただし、私自身の意見は、小林よしのりとかなり異なる部分も多い。
東京裁判がデタラメで違法なものだという小林よしのりの意見には、私も賛成だが、
だからといって、戦時指導者の責任をまったく免罪するのが当然だと言わんばかりの論調や、靖国神社は神道であって当然、という意見には私は同意できない。
この本ではぜんぜん触れられてないが、土肥原陸軍大将は、遺言で、わざわざ自分の葬儀は念仏のみ教えに基づくよう、神道式ではないようにするように指示しているほどである。
日本人のすべてが、神道の信仰の持ち主だったわけではない。
たしかに、そうだった人も多いかもしれないが、浄土真宗やキリスト教の者も少数派とはいえ、大勢いたのである。
したがって、さしたる根拠もなく、国立追悼施設を否定し、靖国神社の非宗教化も否定して、神道形式による国家追悼を当然視するその論調には、疑問がある。
とはいえ、その論点について、さほど詳しく小林はこの本で展開しているわけではないので、靖国神社について小林が書いている本に目を通して、それを検討しなければならないのかもしれない。
あと、戦時指導者の責任を、まったく免除する論調も、かなり違和感がある。
私も、広田弘毅などはまったく死刑には相当しないと思うし、いろんなおかしな点が東京裁判にあるというのは、全く同感である。
しかしながら、板垣征四郎や石原莞爾は、当時の陸軍刑法における専権罪や私戦罪で、当然に死刑に相当すると思う。
東京裁判がおかしなものだからといって、戦時指導者全員が免罪されるべきだと主張するのであれば、まったく受け入れがたいものといえよう。
とはいえ、板垣や石原は別にすれば、広田や重光葵などについて、まったく東京裁判が不当であることは、小林よしのりに完全に同感である。
A級戦犯について、具体的に検討をすることなく、十把一絡げにA級戦犯=悪人、みたいな杜撰な括り方が不当で、許されがたいものであることは、まったくそのとおりだろう。
いろいろ、細かな点ではかなり疑問な点もあるが、そうした点を除けば、なかなか面白い本だった。
重光葵については、この本を読んでて、あらためて調べなおそうと思った。
だいぶ前に買った重光葵の自伝を、まだ読まずに本棚に放置しているのだけれど、重光葵ってやっぱりかなり立派な人だったように思う。
今度、読んでみよう。