舛添要一 「日本新生計画」

日本新生計画

日本新生計画


面白かった。
共感できるところが多かった。

特に興味深かったのは、「大臣キャビネ」の提唱。
大臣キャビネとは、舛添さんがフランスを参考に提唱し、自身が厚相時代にも試して大きな成果があったシステムで、大臣のもとに小さな内閣のようなスタッフをつくること、つまり大臣直属の「ミニ内閣」だ。
政治主導のためには、たしかに不可欠の仕組みと思われる。
民間やさまざまな出自から、従来のその省庁の政策に批判的な考えの持ち主なども集めて、自在にスタッフとして駆使できれば、大臣の力もぐっと上がるだろうし、本当の意味での政治主導が確立できると思われる。

著者が本書の中で、自分自身の体験を踏まえて、政治主導の確立の必要や、今までの永田町の政治文化の打破が必要なこと、金のかからない選挙と政治家の育成の必要を訴えていることは、基本的にはとても共感できた。

また、日本が昨今「内向き」になっていることを嘆き、内向きやガラパゴス化では国力が衰退するのみだと警鐘を鳴らし、外向きに積極進取の姿勢をとることを主張していることも、共感させられた。

都市部で、従来の持ち家政策一辺倒から貸家住宅政策重視への転換を訴えていること。

年金を、今までのように働くとその分受給額が減るという制度を改めて、満額支給にし、高齢者が働く意欲を持ち能力を発揮できるようにすべきだということ。

経済成長戦略や、医療と福祉、セーフティネットの充実。

などなどの政策や理念は、とても共感させられ、興味深いものだった。

また、外交において、牽制外交と多元外交が必要であり、基本的に日米同盟を堅持しながらも、時にはアメリカに違うボールやブラフをかけることの大事さを主張していることも共感させられた。

森林愛護隊などのボランティアの充実や、日本は世界第五位の農業国であり、海外に農地を持つなどの積極策をとるべきだという主張も興味深かった。

廃県置州や、大阪特区構想なども、共感させられ、興味深いものだった。

これほどの熱意と見識を持った政治家が、これから先、あまり才幹を発揮できないとすると、とても惜しい気がする。

舛添さんは、民主党にはこの本の中でずいぶん敵対的な表現で批判しているし、自民党についてもかなり辛辣なことを言っている。
それらの気持ちもわかるし、言っていることはそのとおりとも思うが、実際に日本の権力を握る可能性があるのはこの二大政党のいずれかであることを考えれば、あまり過度に敵対的態度をとることなく、いずれかと柔軟に提携して政策の実現に向けて努力して欲しいものだと思えた。

にしても、舛添さんは、本気の人だなあと、この本や他の本を何冊か読んで、感じさせられた。
今日び、本気の政治家が少ないことを考えれば、それだけでも希少価値と思う。

あと、この本を読んでいてあらためて唖然とさせられたのは、自民党の政治家の中には昨日の料亭の料理の味やゴルフや仲間内のゴシップしか話さない政治家がけっこういるとのことだった。
舛添さんはそんな政治家とは口もききたくないと思い、相手にしなかったせいだが、そういう姿勢が離党せざるを得ない状況につながっていったのだろうか。
民主党もいろいろ問題を抱えているかもしれないが、自民党が浄化能力を発揮して、そのような体質やあり方を見直してくれないと、ちょっと安易な自民党復権というのも困ったものだと思われてくる。

舛添さんがこの本で言うように、現在の日本の小選挙区制はいろいろ弊害も大きく、中選挙区の復活は避けるとしても、フランスのように二回投票制にしたり、ドイツのように比例区を基本にした小選挙区との並立制に改革を試みた方が良いのかもしれない。

いろいろ考えさせられる本だった。