- 作者: 石破茂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/01/26
- メディア: 単行本
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だいぶ前に読んだのだけれど、なかなか面白い本だった。
国防や軍事というのは、戦後の日本人がなるべく考えたくない、考えないことにしてきた分野。
票にもまず全然ならないので、政治家も関心を持つことが少ないかもしれない。
その中で、これほど国防に熱意を持っている石破さんは、ある意味貴重な人材なのかもしれない。
この本、国政の全体について石破さんがどう思っているかはほとんどわからず、全編ひたすらタイトルどおり国防のことについてばかりだが、これほど国防について熱く語る政治家は今の日本では確かに珍しいだろう。
政治・文民がきちんと軍事を理解することが必要であり、自分たちが理解できないことをきちんと管理したり機能させることができるはずがない、という石破さんの意見は基本的にもっともと思う。
「国民が軍をコントロールする、軍をコントロールできる国民になる」
という石破さんの主張には、私も基本的に賛成だ。
民主主義とはつまり財政民主主義であり、
財政民主主義とは「できるだけ多くの国民の福祉を実現するために、合理的なお金の配分をする」と石破さんは定義する。
国防においても財政民主主義の考えを徹底させ、無駄な装備や組織の不合理を省き改め、合理化し、冗費を節約することを提唱し、そのために努力しようとしていることは、とても大事なことだと思う。
石破さんは、核武装やトマホークを日本が持つことに反対だそうだ。
核武装はNPT体制を破壊することになり、NPTから脱退すれば、核燃料の供給や再処理を外国に頼っている日本は、核燃料供給できなくなり、さまざまな支障を来たすという。
それよりは、MDを充実させるべきと石破さんは主張している。
他のテーマでは、特殊作戦群の養成や、民間防衛の提言も、興味深かった。
ただし、私が賛同できないのは、イラク戦争を石破さんは肯定しているところである。
国の数だけ大義はあるという言い方でイラク戦争を肯定しているのは、あの戦争で十五万人以上死んでいることを考えれば、また時間が経つほどイラク戦争の不義が明らかになり、イギリスではブレアに対して事情聴取や公聴会が行われていることを考えれば、イラク戦争に対するあの時期の日本の政府首脳の対応について日本も本来ならばもうちょっと再検討すべきことのようにも思える。
ただし、イラク戦争への賛成は、小泉首相の方針であるし、自民党の政党としての立場だったから、石破さんにとっては職務上やむをえない部分もあったのかもしれない。
石破さんは良くも悪くも、自民党の政治家ということなのだろう。
問題なのは、国防や安全保障政策について、石破さんや自民党を十分に凌駕できるだけの実力を持った政治家が他党にいるかどうかということだろう。
石破さんを上回る、国防への熱心さと知識を持った政治家を、今の民主党政府やその他の野党は持っているのだろうか。
前原さんは外交や国防に熱心ではあるようだけれど…。
石破さんを上回る国防のプロフェッショナルを、民主党や共産党などは、これから養成して心がけて欲しいものだ。
石破さんはいつも、
「自分がなんのためにここにいるのか」
「何になりたいか」ではなくて「これをやるために何になるか」、
を考えるこの本で述べていた。
単に大臣や政治家になることだけ目的の人が多い時代、そうした問いはとても大事と思った。
おそらく、石破さんは、オタクだとすれば、オタクの研究熱心さや無償性を持った、良い意味でのオタクなのかもしれない。
国全体をどうするかはいまいちこの本だけではよくわからないが、国防について考えるには、まあまあ良い一冊なのかもしれない。