- 作者: 篠原昌人
- 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
- 発売日: 2000/07
- メディア: 単行本
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面白かった。
小倉藩出身でありながら、天才的な軍人としての力量によって陸軍大将までなった小川又次の生涯について、よく調べて書いてあった。
江川塾で砲術を学び、第二次長州征伐では小倉藩劣勢の中の苦しい戦いを戦い、
西南戦争、日清戦争、日露戦争と最前線で激戦を勝ち抜いたその勇気と智謀は、「今謙信」と言われたのも諾なるかなと思った。
同じ小倉藩出身の奥保鞏将軍とは、阿吽の呼吸の肝胆相照らす仲だったそうである。
明治の陸軍においては、山県有朋らの主流派と、谷干城らの専守防衛派とが対立していたようだけれど、それともうひとつ、奥保鞏や小川又次や秋山好古らのように、一切政治には関係せず、ただ黙々と己の任務に最善を尽す寡黙な軍人たちの存在があり、彼らの派手ではなく地味だけれど、黙々と最前線で命を張って闘った功績のおかげで、明治の日本はなんとかなっていたのだろうと、この本を読んでてもあらためて思った。
個人的に興味深かったのは、メッケルらとの当時の陸軍の演習の様子である。
メッケルを感嘆させたとは、小川又次の用兵はよほど群を抜いていたのだろう。
あと、今までほとんど知らなかったので、興味深かったのは、桑名藩出身の立見尚文中将のエピソード。
いつかさらに調べてみたいものだ。
奥保鞏を描いた秋山香乃「群雲に舞う鷹」と合わせて、日露戦争や明治の陸軍や、古武士然とした人物に興味のある人は、オススメの一冊である。