森鴎外 「青年」

青年 (新潮文庫)

青年 (新潮文庫)

面白かった。

恥ずかしながら、私は三十代後半になってからはじめてこの作品を読んだ。
もっと早く読んどけば良かったのかもしれないけれど、おそらく鴎外の作品は三十代以降になってからはじめて面白く感じられるもののような気がする。
漱石が十代・二十代も面白く読めるのとそこがちょっと違うのかもしれない。

なんというか、若干違うのだけれど、自分の若い頃を多少重ね合わせながら読んだ。
私にとっても、お雪さんや坂井夫人のような人が、そういえばいた。
この作品は、これから始まりってところで終わってるっぽい感じはたしかにするのだけれど、たぶん続きは各自の人生で、ってことなのだろう。
利他的個人主義、自律的な自覚的な選択や人生、そうして生を領得していくということ。
それは人が、寂しさを抱えながらも、ある時から、やっぱり追い求めざるを得ないし、担っていかなくてはならないことなのだろう。

鴎外は面白いなぁとあらためて思った。