- 作者: 森鴎外
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/06
- メディア: 文庫
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鴎外の時代の青春といえばいいのか、性春といえばいいのか。
ユーモラスに面白おかしくそういったことが綴られていて、とても面白かった。
鴎外は写真の印象で謹厳実直な印象を持ってたのだけれど、『青年』といいこの作品といい、なかなかユーモラスで面白い人だったんだなぁとあらためて思った。
琴を聞かせに来ていた女の子のエピソードは、『青年』の中のドイツ語を習いたがる女の子とともに、明治の頃から肉食系女子ってのはけっこういたんだなぁと思わされた。
たぶん、この作品は、あえてまとめるならば、恋愛に結びつかない性のむなしさと滑稽さを描いたものなのだろうと思う。
なので、ある意味懺悔なのかもしれないし、ある意味、過ぎ去った滑稽な性春をなつかしみ愛惜する気持ちもあるのかもしれない。
そしてまた、ピリオドを打つためのものでもあったのだろう。
今も昔も、日本って国は(あるいは世界のたいていの場所では)、恋愛に結びつかない性の滑稽さとむなしさが溢れているものなのかもしれない。
そして、そのむなしさを見つめて、卒業したあたりから、本当の人生ってのもありえるのかもしれない。
自分自身のvita sexualisを書くならば、どうなるだろうかなぁ。
いささかにがくもこっけいなものに、誰でもなりそうな気がする。
鴎外はやっぱ面白いなぁとあらためて思った。